現在進行形の同性恋愛<10>

 ボクらは西新駅で人をかき分けるようにして電車から降りた。

「久々に満員電車に乗りましたね〜」

 ホームに降りて彼は相変わらず少し女性的な仕草で頭を傾げながら話しかけてきた。彼が何を考えているのかわからずボクは「そうですね」と相槌を打った。電車の中で彼に抱いた気持ちを思い返すとなんだか気まずかった。内心では電車の中でわざと彼に寄りかかっていたことに彼が気がついてるんじゃないかと思って気になっていた。それに彼が寄りかかってきたことがわざとじゃないの?と疑ってもいた。ボクらは地下鉄を出てから、西南大学の側を通り過ぎて百道浜にある研修会の会場に向かった。とりあえず業務命令で仕方がなく行っただけで研修会の内容自体はどうでもよかった。ただ一緒に昼食や夕食を一緒に食べながら話すだけでもデートのようで嬉しかった。

 研修会から帰り道は車両事故もなかったから博多駅行きの地下鉄空港線は空いていて電車の中も広々としていた。でも天神駅で乗り換えたボクらの住んでいる街に向かう西鉄天神大牟田線は混んでいた。体を接するほどじゃなかったなかったけどボクは目の前にいる彼の顔や体を見ているだけでドキドキした。

 ボクは彼と別れて家に帰ってから、はじめて彼と寝ているところを想像しながらオナニーをした。今までは精神的な面に惹かれていたから、そんなことに彼を使おうなんて思ってもみなかった。でも既に一線を超えてしまって彼の肉体的な面にも惹かれ始めていた。彼の全てが好きになってもう我慢ができなくなっていた。

 彼に抱かれたいと思った。彼を抱きたいと思った。

 ボクは頭の中で彼に抱かれているところを想像していた。もしくは彼を抱いているところを想像していた。それから抜き終わった後、なんだか罪悪感を感じてしまった。それなのに翌日になって職場で彼と出会った時には、ボクは自分の本当の気持ちを隠しながら何事もなかったかのように笑顔で話していた。そして夜になると彼と寝ているところを想像しながらオナニーをした。こんなことしてるなんて知ったら幻滅するだろうなと思いながらも好きな気持ちが抑えられなかった。

 その研修会から半年ぐらい経った。

 仕事帰りにスーパーマーケットに立ち寄った。そのスーパーマーケットは職場から近くて、その店に入れば同じ職場の女性社員の何人かと必ずといっていいほど遭遇していた。男性社員と遭遇することは滅多に無くて、たまに遭遇しても休みの日に子供付きの家族連れで一緒に買い物に来ているぐらいだった。できれば誰とも遭遇したくなかった。だって男性で独りで買い物してるのなんてボクぐらいだから独身なのがバレバレだからだ。その日、ボクは店に入って野菜売り場を見て歩いていた。それから何気なく先の魚売り場の方に目をやった時だった。

 あぁ〜古賀さんがいる。

 そこには買い物かごを持った古賀さんがいた。ボクは偶然に出会えたことが嬉しくなって彼に話しかけようと近づいた。

<つづく>