ゲイとして生きる君へ

中学時代に同性愛に目覚めカミングアウトしてました。過去や現在のことを綴っています@福岡

現在進行形の同性恋愛<13>

「知ってます? なんか古賀さんって結婚するらしいですよ」

 パソコンに向かって仕事をしていると同じ部署の同僚の高山君が話しかけてきた。

 あのスーパーマーケットでの偶然の出会いから2人がデートしている場面に、もう何かの嫌がらせかと思うほどに何度も出くわしてしまった。特に何度も出会っていたのが喫茶店だった。

 なんで会いたいと思ってる時は全く会うことができないのに……会いたくないと思ってる時に限ってこんなに偶然に会うんだろう……

 彼らを見かける度にそう思った。ボクは毎朝、喫茶店でコーヒーを買ってから職場に向かうんだけど、その喫茶店でコーヒーを飲みながらサンドイッチを食べている2人を何度も見かけていた。彼らが向かい合って仲良く食べている姿を見かける度に、顔を背けて隠れるようにコーヒーを買って逃げ出していた。ボクが何度も見かけるくらいだから、他の社員も同様に彼らがデートしている場面に出くわす機会があるはずで、しばらくすると古賀さんが結婚するという噂が社内でもちらほら出始めていた。

「そうらしいよね〜ボクも彼女といるところを何度か喫茶店で見かけたよ」
「神原さんは……古賀さんが結婚してもいいんですか?」

 高山君はボクが古賀さんのことが好きだと冗談のように受け取っているみたいで笑いながら話しかけてくるけど、彼の言葉はボクの気持ちの核心をついていた。今更……男性でゲイな上に好きな男性が目の前で女性で奪われて泣き喚いてもただの気持ち悪い奴になるだけで、そんなこと死んでもできなかった。

「いや〜失恋しちゃったよ。一人でやけ酒でも飲もうかな〜」
「あんなに古賀さんのこと好きだったのにいいんですか?」
「略奪愛でもしようかな? それか駆け落ちでもしようかなー」
「2人ともラブラブでしたもんね〜」
「部屋にこもって中島みゆきでも聞こうかな。うらみます〜♪うらみます〜♪あんたのこと死ぬまで〜♪」

 高山君の質問に真面目に向き合うと傷つくので、そうなる前に冗談として流しまうことにした。
 
「でも古賀さんって年齢的にも結婚してないのがおかしかったですよね。なんか彼女の方が積極的に動いて付き合うことになったらしいですよ」
「へぇ〜そうなんだ」

 古賀さんから彼女に告白したのではなくて、彼女の方から古賀さんに告白して付き合うようになったという似たような噂は他の人からも聞いていた。30代後半になっても独身だったし大人しくおっとりしている古賀さんが積極的に女性を口説く姿は全く想像はできなくて、それは周囲も同様のようだった。真偽のほどは確かではなかったけど、ボクはその噂を信じることにした。その方が傷つかないで済むからだ。古賀さんが彼女を口説いたのではボクの精神的なショックは大きかった。彼がゲイではないという可能性も高くなるし、此の期に及んでもまだボクは彼がゲイではないかと思っていた。あくまで彼女から古賀さんを積極的に誘ったことにして彼は流されてまったという筋書きを信じておけばショックは少なかった。古賀さんに愛された女性であれば嫉妬してしまうけど、この考えだったらボクは彼女に対して嫉妬しないで済むどころか共感することさえできた。「ボクの好きな彼の良さをきっと彼女も分かってるんだろうな」という親近感だった。

 さっきから自分の気持ちを書いているけど、書いている自分でもなんて諦めが悪くて、気持ち悪いんだろうと思う。でもボクの筋書きは本当かどうかは置いといて、とにかく自分が傷つかないで済むような噂に乗っかることにした。ただ当時は冷静な状態ではなくて無意識にそう思い込んでいた。後々になって冷静になってから当時の自分の気持ちが分かった。

<つづく>