ゲイとして生きる君へ

中学時代に同性愛に目覚めカミングアウトしてました。過去や現在のことを綴っています。毎日更新中@福岡

それでもボクは盗ってない<1>

「神原ってホモだから男の体操服とか半ズボン姿が好きなんだよね?」

 高校1年の体育の授業前だった。ある生徒から大きな声でそう言われたボクはいきなりの質問の答えを窮してしまった。その生徒は大して親しい訳でもないのに、いきなりボクに向かってそう質問してきた。着替えている最中の生徒たちの視線が一斉にボクに突き刺さった。

「えっ……いや……興味ないよ?」 

 まさかこんなに多くの面前でこんな質問をされるとは想定していなかった。しかも今からボク自身が制服を脱いで体操服に着替えようとしている最中だった。

「でも神原ってホモだから男で抜いてるんでしょ?」
「まぁ……それはそうだけど……」

 みんなの前でカミングアウトしていて男で抜いていないと否定はできない。ましてや高校生になっても抜いたことがないなんて嘘が通じる訳でもなかったので肯定するしかなかった。

「俺の兄貴にクラスにホモがいるって話したら、ホモって男の体操服姿とか半ズボン姿とか好きだって言ってたよ」
「いや……本当に全く興味はないよ!」
「本当かよ? 水着姿とかも興味ないの?」
「本当! 全く興味ないよ! どっちかっていうとボクは制服とか私服を着てる男の姿の方が好きだから!」

 ボクはこのままだと危ないことに気がついて慌てて強く否定した。

「じゃあ男が着替えてるところとか見たいと思わないの?」
「全く興味ないよ!」

 既に周囲の同級生から「ホモの神原の前で体操服に着替えたら危険だ」と疑惑の視線が刺さってきた。その生徒からの質問はしつこく続いていた。

「神原ってホモだから女の更衣室で着替えたりした方がいいんじゃない?」
「えっ? 別に自分が女だと思ってないよ?」
「ホモなのになんで?」

 この生徒は何を言ってるんだろうと思った。この時代は「LGBT」なんて言葉が全くなくてボク自身も自分の存在を「ホモ」というカテゴリーでしか理解してなかった。
 
 ボクは自分が男の状態のままで男が好きなんだけど彼に説明しようにもどう説明したらいいのか分からない……それにこれはボクだけのケースなのかな?一般的なテレビのホモの人って女装してる人もいるし……あれ?どうなんだろう。ボクはホモの中でも異常な存在なの?

 自分の存在をどう定義していいのか分からないのに、相手にどう説明したらいいのか分からなかった。現在であればインターネットがあるので簡単に知ることができる情報も全くなかった。そもそも当時は「ホモ」や「ゲイ」といった言葉の違いも理解していなかった。ボクは田舎で育ってしまったので全くそういった知識がない状態だった。

「とにかくボクは男のままで男が好きなんだけど……」

 ボクは困り果てながらそう答えた。その生徒はボクの説明に納得した訳でもなさそうだけど、自分だけ着替えてさっさと廊下に出て行ってしまった。残されたボクは着替えるタイミングを逃してしまった。周囲で着替えている同級生たちも気まずそうな感じで「神原の前で着替えたらヤバイ」と急いで着替えている。ずっと疑いの視線はボクに向けられたままなのは分かっていた。ボクはブレザーやネクタイなど自分の肌を露出しないで済むものだけ脱ぐことができたけど、シャツのボタンを外しても脱ぐことはできないしズボンのベルトを外しても脱ぐことができなかった。手持ち無沙汰になってしまって、いつも以上に脱いだ衣類を丁寧に畳んで時間を潰していた。それから教室の中の生徒が少なくなるまで待って急いで服を脱いで体操服を着て体育館に向かった。

<つづく>