ゲイとして生きる君へ

中学時代に同性愛に目覚めカミングアウトしてました。過去や現在のことを綴っています@福岡

それでもボクは盗ってない<4>

 そのうち時間が経つにつれてボクのことをホモ扱いして楽しんでいる同級生は固定化されてきた。冷されても無反応を決め込んでいるためか、多くの同級生はホモ扱いしていじるのも馬鹿馬鹿しくなって飽きてきたようだ。最後まで残ったのは4人くらいだった。それもクラス内でヤンキー系のメンバーばかりだった。そのうち楽しみ方が変わってきたようで、ボクが着替える姿を観察して楽しむようになっていた。大人になって振り返るとどっちがホモなんだろうと可笑しく思う。いつまで経ったも彼らが運動場に行かないので「めんどくさいな」と思いつつ着替え始めるとクスクスと笑い声がした。ボクはその笑い声の方を振り向かないで無視した。

「ホモが着替えてるよ」

 うざいな…… そりゃ体育の時間だから着替えるよ。

「あいつチンコついてないんじゃね?」

 そりゃ……男だからついてるよ。

「ブラジャーとかつけてるかと思った」

   そりゃ……男だからつけてないよ。

「あいつ足に毛が生えてる!」

 そりゃ……男だから毛が生えるし剃らないよ。

小さい声で話していても声は聞こえてるし彼らの間で意味ありげに交わされる視線も気づいていた。それでも「彼らに反応したら負けだよね」と思って、ずっと無視していた。

 もうホモ扱いされることには慣れてるから……

 でも体育の授業の度にしつこく観察されて色々と言われた続けてだんだんと嫌気が増してきた。無視していても心のどこかではやっぱり傷ついていた。ただ……1つだけ誤解して欲しくないことがある。ボクは冷やかしてくるヤンキー系のメンバーが人として嫌いではなかった。彼らは集団になるとめんどくさくなるんだけど、一人一人個別に話している分に関しては優しい人ばかりだった。結局、彼らも自分達の集団を維持するための一致団結するための手段としてボクを冷やかしている感じだった。その辺の事情は察しているんだけど……それでも集団で冷やかされるのは嫌な気持ちだった。

 ある日の夜遅くのことだった。部屋で一人で勉強してたけど明日も体育の授業があると思うと憂鬱だった。「あいつら消えてくれないかな」とか思ってみても仕方ないことは分かっていた。

 明日も冷やかされるのかな……学校休もうかな。

 別の文章でも書いたけど、ボクは高校時代に学校を休みまくっていた。でも体育の授業がある日の全て休む訳にもいかなかった。そんなことしたら流石に留年してしまいそうだった。

 あいつらから冷やかされる要素は少しでも減らしたいな……どうすればいいだろう?

 そう思って引き出しの中からハサミを取り出した。そしてしばらくハサミの刃を手に持って眺めていた。

 よし!前から思ってたことをやってみようかな……

 ボクはそう決意して床に何枚かテッシュを敷いて寝間着のズボンの裾を上げて足を出した。しばらく手に握りしめたハサミと足を見つめていた。そして勇気を出して自分の足に生えた毛をハサミで切り始めた。本当は剃る方手っ取り早かったのかもしれないけど、剃ったのが分かったらそれはそれで冷やかされそうな気がした。毛が生えるのは人間だから当然だろうし冷やかしている彼らの足にも同じように毛が生えていた。高校生になれば自然と足の毛ぐらい生えてくるだろう。つまりボクがホモだから毛が生えてるのがおかしいということなのだろうか。

 こんなことして逆に毛が濃くなったりしないのかな……でも自分としては別に毛が少し生えててもどうでもいいのに何でこんな馬鹿馬鹿しいこと夜中にしてるんだろう……夜遅くの部屋の中でハサミの刃が擦れあう音だけがやけに響いていた。

 どうしてもホモという要素を消すことはできなかったので、せめて足の毛を切ることで冷やかされる要素が1つでも無くなるんじゃないだろうかと思った。そして目立つ毛を切り終えてからテッシュに丸めてゴミ箱に捨てた。

 これで冷やかす要素は1つ無くなったよね……

 目立った毛がなくなった足を見つめながら思った。そう思うと少しだけ明日の憂鬱さが晴れてきた。今になって振り返ると本当に馬鹿馬鹿しいと思うんだけど当時のボクは真剣だった。

<つづく>