それでもボクは盗ってない<8>

 ついでにさらに驚くことを白状する。

 同性の松田君に告白するまでも驚きなんだけど、こんな告白めいた発言を繰り返し言っていたら、当然に周囲の同級生はおかしな事態になっていることに気がつくはずだ。ボクもなるべくみんながいる前では告白めいた発言をしないように控えていた。でも仲のよかった3人の同級生の前では隠しきれずにいた。その中の良かった同級生には他のクラスだけど一緒にH書店に行った瀬戸君もいる。

「もしかして……神原さんって松田さんのこと好きになの?」

 ある日、不審に思った仲の良かった同級生の一人が質問したきた。

「うん!好きだよ!」

 ボクは笑顔でそう言ってしまった。このメンバーなら他の同級生たちに広まることはないと安心していたせいもあった。ボクの衝撃的の発言を聞いて「ええぇ!」「マジで!」と驚いて大きな声を出した。その後、ひそひそと「本当なの?」と質問してきたので、ボクは「本当だよ」と答えた。ちなみにその場には当人の松田君もいたんだけど、「こらこら」と告白したボクに対して困って苦笑いしていた。ちなみのこの仲のよかった3人の同級生は卒業するまでボクの松田君への恋心を秘密にしてくれた。他の同級生には一切漏らすことなく、ボクが松田君に告白爆弾を毎日のように浴びせ続けるのをクスクスと笑いながら見ていた。

 その数日後、恐る恐る同級生の一人が質問してきた。

「そういえば……神原さんって松田さんのこと好きなんだよね?」
「うん!」
「じゃあさ……神原さんって松田さんとセックスしたいの?」
「う〜ん。まぁ……そうかな。でも別に見てるだけでいいし手を繋ぐだけでもいいよ」
「じゃあさ……神原さんって松田さんでヌいてたりするの?」

 普通ならこの場は否定すると思う。ただボクは普通ではなかったようだ。

「まぁ……ヌいたことはあるよ」

 本当にアホすぎる! 大人になって振り返ると、なんて……積極的なアホなんだろうと思う。中学時代や高校時代の自分の無防備さにはあきれ返るばかりだ。絶句している同級生の中に松田君本人もいたんだけど、「こらこら」と頭を抱えて困っていた。ここまで異常な発言をしているのにも関わらず、彼のボクに接する態度は変わることなく2人で一緒に下校していた。

 修学旅行の話に戻る。しばらくすると廊下で話す同級生たちの声はどんどん小さくなっていった。みんな露天風呂に向かったようで、部屋に残っているのはボクと松田君だけになった。風呂に入って耳を澄ませていると微かにテレビの音声が聞こえてきた。

 他の同級生たちだったら、ボクが入った風呂に入ったらホモが感染るとか言って嫌がってもおかしくないのに……ありがとう。

 彼はゲイではなかったし愛情を受け入れてくれるなんて思ってもいなかった。でもボクと二人で部屋に残っていたことがバレたら、それだけでも彼自身も危険だったのに一緒に部屋に残ってくれた上に、ボクのことを全くホモ扱いすることなく普通の仲のいい同級生として扱ってくれることが嬉しかった。涙がなかなか止まらなくて、すすり泣く声が大きくなってしまって居間でテレビを見ている彼に聞こえないように押させるのに必死だった。

<つづく>