『ボクの彼氏はどこにいる』
この本に出会った時、ボクは転職して既に東京から福岡に引越していた。このサイトで何度も出てきている天神のジュンク堂という大型の本屋の2階の小説コーナーで見つけて購入した。そのまま隣にあるスターバックスに移動してカバンから急いで本を取り出して貪るように読み始めた。一刻も早くイケメンのゲイが書いた文章を読みたかった。
読み始めてすぐに「ボクも同じゲイだからその気持ちが分かるよ!」と連続で思うことばかりだった。
作者が初めて同性を好きになってしまった気持ち。
そうそう……同性を好きになって自分が「ホモ」って自覚がなかったみたいだけど、ボクも同じなんだよね。自分が「ホモ」って自覚がなかったから、同性を好きになったことを同級生にあっさり認めたんだよね。おかげで中学時代と高校時代は大変だったけど。
作者が辞書で『同性愛』という言葉を調べてみたこと。
そうそう……ボクも同じように「同性愛」や「ホモ」などと言った言葉を辞書で調べたみたことがあったな。でも調べてみたけど、なんの手がかりもなかったんだよね。ありきたりな言葉の説明だけしか書いてなくてガッカリしたな。
作者が結婚しなくても不自然でない職業につこうとしたこと。
そうそう……ボクもシステムエンジニアになった理由の一つとして結婚しなくても良さそうなコンピューターオタクの職業を選んだんだよね。今になって思うと物凄くシステムエンジニアに対して偏見を持ってたよな。
作者が好きでもない女性芸能人を好きなことにしていたこと。
そうそう……ボクも好きな女性芸能人を訊かれるたびに困ったな。適当に無難な芸能人の名前を答えていたよ。周囲の人たちは本気でボクがその女性芸能人を好きだと勘違いしてて話を合わせるのに苦労したよ。
作者が初めて同性愛関連の本を緊張しながら買ったこと。
そうそう……ボクが初めて同性愛関連の本を買ったのは大学時代だったな。コソコソしながら棚の本を取ってレジに持っていくまでかなり緊張したよな。不審者すぎて周囲からみたら万引きしようとしてるようにしか見えなかったろうな。
どこを読んでも共感できる内容ばかりだった。
初めて共感できる同性愛関連の本に出会ったな……
今まで買った同性愛関連の書籍は「同性愛とは?同性愛者とは?こういうものである」ということを評論したような文章ばかりで読んでいても共感できるようなものではなかった。それにほとんどの本で作者自身が同性愛者ではなくて、あくまで同性愛をテーマに研究している人ばかりだった。この本は作者自身が同性愛者で、ボクと同じ立場のゲイだった。
他にも大学時代に初めてカミングアウトしたことや、インターネットで知り合ったゲイ仲間と実際に出会ったことなど、どこを読んでも共感できた。
あぁ……この人はなんてボクと似たよう人生を歩んでいるのだろう。
そう思いながら読み進めた。
ただ……第4章に差し掛かった辺りからだった。少しづつボクの歩んできた人生との差が激しくなってきた。そしてなぜか同時に共感もできなくなっていた。
そしてモヤモヤとした気持ちを抱いたまま、一気に本を読み終わった。
この作者は今何をしてるんだろう?
そう疑問に思って読み終わった本を閉じてからスマホで彼の名前を検索した。調べてみると豊島区の区議会議員になっていることが分かった。
なんでこんなにモヤモヤした気持ちが残ってるんだろう……
ゲイの人が赤裸々に人生を綴った本を初めて読んだ高揚感が残っていた。その一方で読み終わった後に整理のつかないモヤモヤが残っていた。
このモヤモヤとした感情が後々でこのサイトを始めるきっかけになるんだけど、それはもう少し先の話。
<つづく>