ゲイブログを書く前後<3>

 モヤモヤとした気持ちは残ったとしても、この本が初めて心の底から共感できたものであったこと間違いなかった。

 ボクは家に戻ってからインターネットで『ボクの彼氏はどこにいる?』と似たような同性愛関連の書籍が販売されていないか探してみた。思い返せばまともに同性愛関連の書籍を探してみたのは大学時代だった。あれから10年近く経っていた。新しい書籍が出版されていても不思議ではなかった。Amazonは既に存在していたから『ボクの彼氏はどこにいる?』を検索して似たような本がないか調べてみた。でも探しても似たような本を見つけることはできなかった。

 やっぱり珍しい内容の本だよね……

 そう思いつつも諦めることができなかった。もっとゲイの当事者が実体験をストーリー形式で書いた文章を読んでみたかった。

 本でなくてもホームページやブログで似たようなサイトはないかな?

 そう思って「ゲイ ブログ 体験談」や「ゲイ ホームページ 体験談」で検索してみた。でもボクの要求に応えてくれるようなサイトは見つからなかった。目につくのはどこかのハッテン場の体験談や、出会い系サイトの体験談、ウリ専の体験談などが断片的な文章で投稿されているものばかりだった。

 やっぱり見つからないな……

 ボクは一人の人間が同性愛に目覚めて、どんなことに悩んでどんなことに葛藤して、どう考えてどの道を選択して生きているのか、その人の人生を細かく描いた文章を読んでみたかった。もちろん性体験も人生の一部ではあるけど、そこだけに執着して描かれているとなんだか読みたい気分にはならなかった。

 この本が発売されたのは2002年だった。ちょうどボクが大学生の2年生になって同性愛関連の書籍を探していた時期に発売されていた。発売当時は見つけることができなかったけど、あれから約10年が経ってようやく巡り合うことができた。

 ゲイのボクがこの本を読んでみて感激したように、他のゲイの人達にも同じようにこの本を読んで感激した人はいたはずだ。10年も期間があったのだから、この本に感化されて同じような文章を書いている人がいると思った。それなのにどんなに探してもボクの希望に合った本やサイトを見つけることはできなかった。

 誰も書いてなければ自分で書いてみたら?

 そう一瞬思ったけど、深く考えてみることはなく頭の中で打ち消していた。

 結局、読んでみたいという感情だけを残したまま探すことを諦めてしまった。

<つづく>