読み終わった 『ボクの彼氏はどこにいる?』は本棚に眠っていた。でも時々は本棚から取り出してパラパラとめくって気になった箇所を読み直したりしていた。やっぱり、この本と似たようなゲイの人がどんな風に考えて生きてきたのか赤裸々に書いた文章を読んでみたいと思いは消えなかった。
それからまたしばらく時が流れたある日だった。
職場で昼休み中にインターネットをしながら昼ごはんを食べている時のことだった。
ボクは『はてなブックマーク』のページを見ていた。以前からネット上で話題になっている記事を確認するのに『はてなブックマーク』が便利だったので定期的に巡回していた。その『はてなブックマーク』のトップページに上がっていた話題を適当にクリックして読んでいる時だった。
ボクは以下の記事に出くわした。
この投稿された文章を読んでいる途中のことだった。ボクの目に気になる言葉が飛び込んできた。
僕がゲイだってことはSさんに言えるわけもなく「いやー、彼女いないんですよねーw」といつもの返答。23年もゲイやってると、悲しいことにすぐ出てくるこのフレーズ。
あれっ……もしかしてこの文章を書いた人ってゲイなの?
そのことに気がついて過去の記事を確認すると、文章を書いた人がゲイだとわかるタイトルの記事がいくつかあった。
まずいな……職場でゲイ関連のサイトを見てるのが周囲の同僚に気づかれたらめんどくさいよな。
サイト名をスマホにメモして家に帰って、ゆっくり読むことにした。
ボクは夜に帰宅して、あのサイトを再び開いて読み始めた。
『はてなブックマーク』が多くついた記事はゲストハウスに入居中の人と口論になった話で、ゲイの話とは直接には関係がなかったけど最後まで集中して読んでしまった。それから他の記事も一気に読んでしまった。
へぇ……この文章を書いているchuckさんって、ボクよりちょうど10歳ぐらい年下なのか。
過去の記事を読んでみると、なんとなくchuckさんの人柄が掴めてきた。
chuckさんは12歳ぐらいからゲイだと認識してたのか……ボクは13歳だったから年齢的には近いよな。群れるのが苦手な性格なのか……ボクも同じなんだよね。特定の1人か2人と仲良くなるのは得意なんだけど、理由もなく群れるのは嫌なんだよね、だから飲み会とかも嫌いだなんだよね。
他にも自分がゲイあることの認識を書いた文章を読んだ。
ただし、ゲイであること自体にあまり悩みはありません。
それは自分を構成する、単なるひとつの要素。たとえば血液型や出身地みたいに。
23歳の僕はそんな風に捉えています。
けれど、ある種の生きづらさはやっぱり感じています。
ゲイであるからこそ見えてしまうもの。とか。
ボクはパソコンの前で思わず微笑みながら文章を読んでいた。
なんだかこの人ってボクの20代前半の頃と似てるな……でもなんだろう?この人が書いてる文章って全体的に気になるよな。
ただ、なんとなく性格が似ていると思ったから惹かれたわけではないとは思っていた。
他のゲイの人たちが書いたブログランキングに上がっているサイトもいくつか読んでみたけど、いまいちピンとくるものがなかった。でもなぜかchuckさんの文章だけは気になってしまった。書いている文章の内容も直接的にゲイと関係がない話が多いのに、なぜか引き込まれて読んでしまっていた。
他のサイトと違ってなんで惹かれたのかも分からなかったけど、ボクはとりあえずchuckさんのサイトをお気に入りの巡回先に入れて定期的に読むようになった。彼の書く文章に惹かれた理由をはっきりと認識するのは、それはもう少し先の話。
このサイトを始める1つ目のきっかけが『ボクの彼氏はどこにいる?』という本。そして2つ目のきっかけがchuckさんの『Only you can free yourself.』(当時は別のサイト名だったはず)というサイト。でもこの時は2つのきっかけが結びつくことはなくて、ただ「なんとなく……どっちも心に引っかかるよね」と漠然と思っていた。
<つづく>