LGBTブームと気持ちの変化<11>

 ボクは少し離れたところに立ってから、この展示物を鑑賞している人たちを観察していた。

 展覧会の入場者は大学関係者と思われる人たち。大学生の親と思われる人たち。通りすがりの一般の人たち。大きく3つに分かれているように感じた。他にも九州産業大学の卒業生の作品は沢山あった。でも入場者が1番長く足を止めて見ている作品が、このLGBTをテーマに扱った作品のようだった。

 入場者の若い女性は、LGBT当事者のアンケート結果が書かれたパネルをバックに写真を撮っていた。

 もしかして……LGBTの当事者なのかな? もしそうならこの若い女性は勇気があるよな……

 そんなことを思ったりもしていた。一般の参加者を装って、何の関心もないかのように、この作品を眺めているフリをしている自分のことが情けなく思えた。

 ただ入場者のうち若い人はわずかで、入場者の多くは50歳〜60歳をとうに過ぎた人たちだった。60歳を過ぎた人たち……つまりボクの親の年代にあたっていた。

 ボクは自分の親とそう変わらない年代の人たちが、この展示物を見てどんな感想抱いているのかそっと表情を伺っていた。

 興味津々という感じで眺めている人たちを見ると嬉しくなった。全く興味がなさそうな人たちを見ると悲しくなった。

 ボクはずっとこの作品を見ている人たちの様子を観察していた。そんな自分のことに気がついて、ようやくこの展覧会に行きたいと思った自分の本当の気持ちに気がついた。

 あっ……そうか。ボクがその展覧会で本当に観たかったものは、こういったLGBTを取り上げた作品を、LGBTの当事者じゃない人たちが見たとしてどんな反応示すのか見たかったんだ。

 ようやく自分の本当の気持ちに気がついた。

 ここ数年、LGBTの登場人物出てくるドラマなどの作品が巷には溢れている。ボクは、その作品を見て心の中でモヤモヤとしたものを抱えていた。

 一人でテレビを見ていても、自分が抱いた感想しか分からない。

 だからtwitterのタイムラインを眺めて、LGBTの当事者でない者たちがどんな反応示しているのか観察していた。twitterのタイムラインを眺めている限りは、LGBTのキャラクターに対して好意的な意見が多かった。ただ現実問題として、twitterなどに投稿していないと思われる年配の層もいるわけで、その人たちがLGBT を取り上げた作品を見て、どんな反応を示すのか興味はあった。その年配の人たちは、つまりボクの親ともほとんど変わらない年代になるのだ。

 もし自分の親がLGBTの登場人物が出てくるドラマを見たら、どんな感想を抱くんだろう?

 ずっと親年代の人たちの反応が気になっていた。

 そしてボクは心の中でLGBTのキャラクターがドラマに出て来たところで。

 いったい何の意味があるんだろう?

 そう密かに疑問に思っていた。ただこの展覧会に来て、LGBTを扱った展示物を見て、そのLGBTの扱った展示物を眺めている人たちを見て、ようやく腑に落ちてきた。

<つづく>