ゲイブログを書く前後<21>

 ボクはよく他の人が書いたゲイブログを読みながら、文章の断片から「この人はどんな性格、考え方、顔をしているのだろう?」とか、そんなことを色々と想像をしている。

 ボクの想像上ではあるけれど、chuckさんやヤシュウさんの書いた文章を読みながら、「こんな人なんだろうな」と頭の中にはっきりと姿を思い浮かべることができる。他にも「はてなブログ」でゲイブログを書いている、なおさん。アクアさん。リキマルさん。gotenbaさん。ふぁるこんさん。Takatoさん。AIR-J' さん。エゾマルさん。Tamago_Poloさん。shingyamdさん。たらそふさん。と沢山の人が書いてるけど、「きっと……こんな人なんだろうな」と頭の中にぼんやりと姿を思い浮かべることができる。
 
 でも……なぜか高橋さんだけは、どんなに文章を読んでいても、頭の中に姿を思い浮かべることができなかった。思い浮かべることができるのは、無表情の「しろぬ〜ぼ〜」の姿だけだった。

 ボクは高橋さんの文章を読む度に、「高橋さんのことが全く分からない……」と頭を抱え込んでいた。

 高橋さんの書く文章は不思議で、書籍などのレビュー記事が多いのもあるけど、自分のことを書いているのに、どこか客観的だった。

 例えば『地域のセクマイコミュニティに参加した』という文章がある。


 この文章の中でも、どんな人がいて、どんな話をしたとか全く書かれていない。

 これが他のゲイの人が書いたら、「緊張したー」とか「イケメンがいたー」とか「終わった後に飲んで、こんなことがあったー」とか、もっと長々と文章を書いてると思うけど、最初から最後までどこか自分に対して距離を置いているような感じの文章を書いている。

 ボクは想像の中で、しろぬ〜ぼ〜の高橋さんの前に正座して更新された文章を読んでいた。

 そして文章を読み終わってしろぬ〜ぼ〜に「高橋さんってどんな人なんですか?」と質問した。

 しろぬ〜ぼ〜は無言で、ボクの質問はスルーされてしまった。

 そんなやりとりを妄想しながら、過去の文章や更新された文章を読んでいたけど、「これはこれで……高橋さんの個性だよな」と思っていた。

 本当のことを言うと、ボクは高橋さんのサイトを読み始めて1ヵ月経った位までは、「高橋さんという人は実在しない」と思っていた。「どこかの団体に属している複数の人が文章を交代で書いているのではないだろうか?」と本気で思っていた時期があった。

 高橋さんのサイトのサイドバーにある、「しろぬ〜ぼ〜」の姿が、なんだか岡本太郎がデザインした「太陽の塔」と同じような異物感というかプレッシャーを与えて来た(ぬ〜ぼ〜と言い、太陽の塔と言い、失礼なことを書いてごめんなさい。まだまだ高橋さんの名前は出続けます)。

 ボクの中で理解ができないが故に、なおさら高橋さんの存在感が増していった。

 高橋さんの存在が気になってしまうから、高橋さんが紹介していた書籍や映画を見ることにした。そして「ボクも高橋さんのようにレビュー記事を書いてみようかな」と思うようになった。

 高橋さんに影響されて、なんとなく書き始めたレビュー記事。これがボクの意識の中に思わぬ影響を与えるとは思いもしなかった。

<つづく>