ゲイブログを書く前後<24>

 モスバーガーからの帰り道、ボクは高橋さんの書いた文章を思い出してニヤニヤしながら歩いていた。すれ違う人から「この人なんでニヤニヤしてるの?」と不審そうに見られても止められなかった。

 やっと高橋さんという人が実在していることを実感できて、心の尻尾を捕まえることができたと思った。

 ボクは帰り道を歩きながら、高橋さんの書いた『老いと嗜好性』の変化について、同じテーマで文章を書こうと決めた。そして高橋さんがそっと秘密を教えてくれたように、自分の中で秘密をしていたことも織り交ぜながら書いてみたいと思った。

 10月2日から『同性愛者の性長記録』をテーマに書き始めた。

 さっきも書いたけど、7月までにボクの人生で起こった主要なことは書いてしまったので、7月から8月の間は、ずっとサイト更新を止めてもいいかな?と思っていた。でも高橋さんに影響されて『同性愛者の性長記録』を書いている時が、毎日文章を書いていて一番楽しかった。ちなみにまだ書き足りないことがあるので、いつか機会を見て書き足していこうと思っている。

 アニメキャラをおかずにして初めてオナニーしたこと。

 初恋の同性の写真を密かに手に入れたこと。

 初めて夢精したこと。

 ホテルでAVを見ながらオナニーのおかずにしたこと

 誰にも望まれてもいないのに、自分の中で秘密にしていたことを書きまくった。この『同性愛者の性長記録』で、自分の恥ずかしい部分を大放出してから文章を書き方が明らかに変わったと思う。どこがどう変わったのかは、11月からの出来事なので後で書く。もともと『老いと嗜好性』の変化について、いつかは書くつもりだったけど、ここまで秘密を書くつもりなんて毛頭なかった。でも恥ずかしいことを書いているのに毎日が楽しくてしょうがなかった。

 高橋さんのおかげで、ボクは文章を書くことが気楽に楽しく書けるようになった。文章を書き続けることが楽しくなった。

 もし……9月23日に高橋さんの文章を読んでいなかったら、このサイトの更新を止めていたと思う。もしくは楽しいとも思わずに自分の中の義務感だけで、このサイトの更新を続けていたと思う。

 それに『同性愛者の性長記録』を書いている途中で思わぬ出来事が起こった。ずっとゲイブログを書き続けることの心の支えにしていた、「ヤシュウさん」が言及してくれたのだ。

 

 この日は、夜からシステム更新の立会いの仕事が入っていてバタバタしていた。そんな時に胸ポケットのスマホが通知してくれてヤシュウさんが言及してくれたことに気がついた。

 とうとう念願のヤシュウさんに夜襲されてしまった……

 スマホを手にして仕事中にも関わらず、そんな愚かな妄想をしてトキめいていた。

 ヤシュウさんが書く文章は、chuckさんとも高橋さんとも違っていて不思議だった。簡潔に言うと「好感の持てる丁寧な文章を書く人」だと思っている。

 実際に会うことはないとは思うけど、ボクはヤシュウさんと会うのが怖い。ヤシュウさんの文章を読んでいて「リアルで出会ったら恋においてしまう気がする」と予感させるような文章を書くからだ。

 ゲイブログを読んでいて面白いのは、みんながゲイバーやハッテン場などの同じような場所に行っているのに、書く視点がバラバラだと思えること。その人の個性が文章に思いっきり反映されること。

 例えばある出来事に遭遇して、chuckさんとヤシュウさんと高橋さんが文章を書いたとしたら全く違う視点で書くと思うと想像すると面白い。

 chuckさんは起こった出来事を見て、自分がどう感じたのかを中心に文章を書くんだろうと思う。誰も踏み込まない心の樹海に一人でどんどん分け入って文章を書くんだろうと思う。

 ヤシュウさんは、起こった出来事の説明と、自分がどう感じたのかをバランスよく書くんだろうと思う。文章を読んでいる人に配慮した丁寧な文章を書くんだろうと思う。

 高橋さんは、それら全てをばっさりと捨てて、あくまで客観的な文章を書くんだろうと思う。出来事を客観的に見ている自分のことを、さらに客観的に見ているような文章を書くんだと思う。

 ボクは自分で文章を書くことも楽しいけど、そんなゲイブログを書いている人たちの個性を妄想しながら文章を読むのも楽しくてたまらない。

<つづく>