LGBTシンポジウム参加レポ<3>

第一部 基調講演
渋谷区総務部男女平等・ダイバーシティ推進担当課長 永田 龍太郎氏
講演テーマ:LGBTは「いない」のではなく「見えていないだけ」〜すべての人が多様な性(セクシュアリティ)を生きている〜

 現在、パートナーシップ制度を持っている自治体は7つあります。

 2015年.11 東京都 渋谷区
 2015年.11 東京都 世田谷区
 2016年.4 三重県 伊賀市
 2016年.6 兵庫県 宝塚市
 2016年.7 沖縄県 那覇市
 2017年.6 北海道 札幌市
 2018年.4 福岡県 福岡市

 既に、大阪市がパートナーシップ制度を導入したいと討論が始まっています。また、東京都港区が検討中です。

 私はGAPに勤めていて社内でカミングアウトしていたら、そのうち社内のLGBT施策に携わるようになりました。そういったことが縁になって、その後2016年の9月から渋谷区役所の任期付職員になりました。
 
「なんで渋谷区がLGBT施策に取り組んでいるのか?」と、よく質問を受けます。多くの自治体が将来のビジョンとなる基本構想を持っていますが、渋谷区は20年おきに基本構想を改正していて「ちがいをちからに変える街 渋谷区」をスローガンにかかげて、これから先の20年を進んでいこうと定めました。ちなみに福岡市の基本構想は「住みたい、行きたい、働きたい。アジアの交流拠点都市・福岡」です。

 全ての自治体は基本構想を持っていっていますが、「ちがい」という言葉を基本構想に盛り込んでいるのは、恐らく渋谷区以外にないのではないか?と言われるほどに、珍しい構想となっています。「ちがい」を「ちから」に変えるということは、どういうことかというと、「ダイバーシティ」と「インクルージョン」という2つを一番大事なものとしています。

ダイバーシティ(多様性)
多様性、人種、性別、年齢、障がい、LGBTをふくむあらゆる人のあり方。

インクルージョン(社会的)
「共助」や「持続可能性」視点を通じて、多様性を尊重し、エネルギーに変えてゆくこと。

「ダイバーシティ」という言葉は聞いたことがあると思いますが、「インクルージョン」という言葉はあまり聞いたことがないと思います。「ダイバーシティ」という言葉は、「多様性があるよね?」ということを意識しているだけなので、実はそこから一歩も進んでいません。大事なのは「インクルージョン」です。

 聞きなれない言葉だと思いますが、「包摂、包含」という言葉にあたります。海外では2つの言葉を別々に扱うことは稀で「ダイバーシティ&インクルージョン」と1つの言葉として扱っていいます。日本のように別々の言葉として扱うことは稀です。

 

 1階の「インクルージョン」が大事です。違いを認め合って一緒に生きていく。そういった意識を、しっかり持っていれば、2階の部分に様々な「ダイバーシティ」の要素があることが、これから先見えてくるかもしれません。単純に性的マイノリティだけの課題ではなく、そこから全ての多様性を認め合うことをどれだけしっかり育んでいけるのかを大事にしながら、渋谷区では計画に取り組んでいます。決してLGBTだけのことをやっている訳ではなく、2階の全般について取り組んでいます。

 また渋谷区のスローガンの「ちがいをちからに変える」というのは、人権課題だけでなく。福祉や教育やビジネスなどエンターテイメントの場において、いろいろな違うものが混ざり合いぶつかりあって、その中の「気づき」が未来を作っていく。そこを恐れずに進んでいこうという思いが基本構想に込められています。

 こういった場で「多様性を認め合うってどうやったら身につくの?」とよく質問がされます。私は「まずは自分の中の多様性に気づくことをされてはどうか?」とお勧めしています。

 例えば……私はゲイ男性です。同性愛者という意味でのゲイはマイノリティです。しかし男性という意味合いにおいては、残念ながら日本はジェンダーギャップが先進国で最低の国です。ということは、男性であるということでは、マジョリティの側にいる。もしくは日本人であるということは、海外の場ではマイノリティになります。

 いろんな要素が自分の中にもある。それが時と場合によって強くなったり弱くなったりする場合がある。そういったことに気づくことで、「お互い様」の感覚が身についていくのではないでしょうか? そういった中で「多様性を認め合う」ということが少し理解できるのではないでしょうか?

 これはNTTドコモのCMですが自分の中の多様性に気づくということをわかりやすく説明した動画です。


 多様性を考える時には、ご自身の中のいろんな要素。そんな要素の中で強い・弱い点に気づくことから、初めてみたらどうしょうか?ということを非常にわかりやすく説明したCMです。

 ここまでで多様性を認め合うということを、なぜ渋谷区が取り組んできたのか説明をしました。

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 ここまでの感想だけど、ボクはこの話を聴きながら、ずっとあることを考えていた。

<つづく>

 

 

※左上の写真の中央のメガネをかけた方が、永田 龍太郎氏です。

※読みやすいようにノートに速記したメモをもとに要約しながら書いています。