ゲイ集う成人映画館の手記<1>

あぁ……「千本日活」か「シネフレンズ」のどっちかに一度行ってみたいな。

ボクはパソコンに表示された文章を読みながらそう思った。画面には「千本日活」というキーワードや「シネフレンズ」というキーワードをgoolgeで検索した結果が表示されていた。

京都市内は地形が盆地だから冬になると底冷えする。ボクは椅子に座って、田舎のおばあちゃんが縫ってくれた青い半纏をまとっていた。それでも寒くて体のすぐ近くまで暖房機器をもってきても、まだ寒気がした。北海道から京都の大学に来ている学友は「北海道より京都の方が寒い」と嘆いていた。ただ寒気に震えながらも、画面に映し出された文章を読んでいると、ボクの下半身はなぜか興奮していた。

「千本日活」

「シネフレンズ」

知らない人がこの二つのキーワードを聞いて何を想像するのだろう。

どちらのキーワードも「映画館」の名前だ。

その映画館はどちらも「千本通」という京都市内を縦に走る道の近くにある。二つの映画館は近距離にあって、お互いに歩いて10分もかからないくらいの距離にあった。ボクはパソコンの画面を凝視しながら、その映画館で繰り広げられている体験談を読んでいた。その体験談には、まだ若いボクには想像もできないような未知の世界が広がっていた。

その映画館の存在を知ったのは、このサイトでも何度か登場している「京都ハッテン場ガイド」というホームページを見たからだ。そのホームページには京都市内に存在する「ハッテン場」が紹介されていた。もうかなり前に閉鎖されてしまったホームページだけど、ボクはこのホームページに出会ってから、京都市内にある野外のハッテン場や有料ハッテン場を散策していた。ただ野外のハッテン場で誰かと関係を持つのは抵抗があった。いや……抵抗があったといういうより絶対に嫌だった。どちらかというとボクは同じゲイの話し相手を求めて散策していた。どこかで気があうゲイ仲間と出会えないかと探し求めていた。

あぁ……やっぱりこの映画館に一度行ってみたいな。

そう。この二つの映画館は、どちらも普通の映画館とは違っている。なにが違っているのかと言うと、それは「成人映画館」なのだ。しかもただの成人映画館ではない。

「ホモの人が集まる成人映画館」なのだ。

だから「京都ハッテン場ガイド」に紹介されていた。

この話は、ボクが大学二年生の時。季節は雪が降りしきる真冬のことである。

<つづく>