ゲイとして生きる君へ

中学時代に同性愛に目覚めカミングアウトしてました。過去や現在のことを綴っています@福岡

ゲイ集う成人映画館の手記<5>

 ちょっと……というか……かなり異常な世界じゃないだろうか?

 さっきの女子学生たちも、まさか自分たちが歩いている道から、わずか3メートルの場所に「全裸の男性」がいるなんて夢にも思わないだろう。初めて野外で全裸の男性を見たという興奮(性欲的な意味ではない)から、気分が落ち着いてくるにつれて一瞬だけ見た光景が、どんどん頭の中に蘇ってきた。

 短髪の全裸の男性がいた。その全裸の男性の足元に、帽子をかぶったスキンヘッド風の男性がしゃがんでいた。他にもベンチに座っている人たちがいた。

 そうだった……気が合いそうな人がいたらトイレの中に誘ってヤるんだったな。

 そういえば「京都ハッテン場ガイド」にも、そう説明が書いてあった。ただベンチに全裸になっている人がいるとは書いていなかった。

 はぁー頭が痛いな。

 ボクは京都アク●リーナの鉄柵にもたれかかって考えごとをしていた。さっきのベンチに戻る気分には到底なれなかった。もし誰かに見つかって、ボクまで彼らと一緒に逮捕されるのはごめんだった。なんだか野外のハッテン場には、ボクの求める居場所はないように思えた。

 しばらくして携帯電話で時間を確認すると23時半を過ぎていた。

 もう帰ろうかな…

 どうしようか迷っている時だった。西●極から出て来て、京都アク●リーナに向かって歩いている人がいた。

 あれっ……あの人見たことがある。

 なんとなく大柄な姿に見覚えがあった。ボクは自分の記憶を頼りに、その人が誰なのか思い出した。気がつくと夢中で、その人の後を追って歩き出していた。

「あの……すみません!」

 彼の後ろ姿に向かって、いきなり声をかけてしまった。その人は声をかけられてから怪訝そうに振り返った。

「Mugenさんですよね……?」

 ボクは声を小さくして恐る恐る尋ねた。その人は「えっ?」と驚いていた。

「あの……何ヶ月か前に●都●所で会った大学生です……」

 ボクの言葉を聴いて思い出したのか、Mugenさんは笑い出した。

「あぁーなんでここにいるの?」
「それは……いろいろ野外のハッテン場を散策してまして」

 そもそもあなたの作ったホームページに案内されるがままに西●極までやってきたのだ。

「西●極のトイレには行ったの?」
「あっ……はい。さっき行きました。そしたら全裸の男性がいて、それでヒイてこっちに逃げて来ました」
「ははははっ! 全裸の人いるよねー」
「びっくりしたんですけど、そんなに出没するんですか?」
「うん。割と出没するよ」
「そうなんですね……」

 それが普通になっているゲイの世界の異常さにヒイてしまった。

「Mugenさんも全裸になるですか?」
「いや。ボクはそんなことをしないよ」
「どこに行くんですか?」
「こっちの京都アク●リーナもハッテン場のスポットなんだよ」

 そう言ってMugenさんは歩き出した。ボクはどうしようかと思ったけど、彼の後についていくことにした。京都アク●リーナの正面玄関の左手は芝生があって坂道になっていた。Mugenさんは坂道を登り始めた。そして中腹まで来たあたりで立ち止まった。

「時々だけど、この芝生でヤってる人がいるんだよねー」

 さっきのトイレと同じで何の変哲もない芝生だった。

「Mugenさんもヤったことあるんですか?」
「あるよー」

 そう言ってしばらくキョロキョロと辺りを見渡していた。小高い丘になっていたから見晴らしがよかった。しばらくしてMugenさんは坂道を降り出した。ボクも一緒に後について歩いた。坂を降りてから、京都アク●リーナの建物に沿って歩いていた。建物の裏手に回るにつれて、どんどん人気が無くなっていった。雰囲気的には夜の体育館の裏という感じだ。それから下に降りる階段がある場所で立ち止まった。

「ここの階段でもヤってる人がいるんだよねー」
「Mugenさんもヤったことあるんですか?」
「あるよー」

 あのホームページを作ってしまうだけあって細かいスポットをよく知ってる。ただ……それにしてもゲイの世界はどうなってるんだろう。

 ボクらはしばらく立ったまま雑談をしていた。ただ雑談をしている最中にも、どんどんMugenさんのボクを見る目が変わってきていることに、薄々気がついていた。

<つづく>