ボクは初めてMugenさんに出会った深夜遅く。家に帰ってから、あなたのホームページを開きました。そして管理人の紹介ページで、携帯カメラで撮影したあなたの写真を見つけました。
やっぱり……さっき出会った人がMugenさんだった。
ボクはパソコンの前で、嬉しくて感動しました。だって大学時代のボクにとって、あなたは師匠のような存在だったから。ホームページには、わざと顔がぼやけた写真を掲載されていましたが、それでもついさっき会った人だと分かりました。
野外のハッテン場で話した人も何人かいます。でも一番長く話したのがMugenさんでした。
Mugenさん。あなたは今でも日本各地を駆け回る仕事を続けていますか?
あなたが一番好きだと言っていた、中島みゆきの『旅人のうた』。
ボクはあの曲を聴く度に、あなたと話した夜のことを思い出します。そして「Mugenさんは今頃どこを走ってるんだろう?」と思います。
男には男のふるさとがあるという
女には女のふるさとがあるという
なにも持たないのは さすらう者ばかり
どこへ帰るのかもわからない者ばかり
歌詞の内容が、「男のふるさと」にも、「女のふるさと」にも、少しあやふやで居場所がない同性愛者のことを歌っているようで、少しドキッとする歌詞だと気がつきました。でも日本各地を駆け回る仕事しているMugenさんにぴったりな曲ですね。あの時、夜会のDVDを貸してくれようと声をかけてくれたけど、断ってしまってすみません。でも、そう言ってくれて嬉しかったです。
Mugenさん。ボクのことを思い出してくれましたか?
あなたにとっては、きっとボクのことは多く出会ったゲイ仲間の一人に過ぎないかもしれません。
でも思い出してくれたら嬉しいです。ボクがあなたの作ったホームページにたどりついたように、いつか……あなたもボクの書いた文章にたどりついてくれたら嬉しいです。
ボクはMugenさんのことを、ずっと忘れないと思います。
◇
話を元に戻そう。
ボクは大学時代に、こういった感じで、『京都ハッテン場ガイド』というホームページに導かれるかのように、いろいろな場所に行ってみた。野外のハッテン場に行った。有料ハッテン場にも行った。
その延長に「成人映画館」があった。
ただ、成人映画館に関しては、特別な出会いなんて期待していなかった。ネットで成人映画館での体験談を読んだだけでも、そんなにマッタリとした場所ではないことは分かっていた。
「京都ハッテン場ガイド」にも、「訪れる客の年齢層は高め」と書かれていた。「女装子もいる」と書かれていた。それに検索してヒットする、「千本日活」や「シネ・フレンズ」の体験談を読んでも、屋内という場所柄のせいか、かなり激しいことが書かれていた。ちなみに「シネ・フレンズ」 の方は、ボクが大学を卒業するタイミングぐらいで閉店になっている。
ただ、ボクが成人映画館に行ってみたいと思った動機は一つだけだ。
<つづく>