ゲイとして生きる君へ

中学時代に同性愛に目覚めカミングアウトしてました。過去や現在のことを綴っています@福岡

ゲイ集う成人映画館の手記<12>

 ボクはドアを開けてカーテンをめくって劇場に足を踏み入れた。

 劇場の正面にはスクリーンがあった。劇場の中は意外と広かった。座席数など細かいことは覚えていないけど、100席はあったと思う。周囲を見渡すと、なぜかみんな席に座らずに突っ立ったまま映画を鑑賞していた。もしくは壁にもたれて映画を鑑賞していた。

 お客は15人くらいいた。

 ネットに書いてあったけど、確かにお客の年齢層は高いな……
 
 お客はボクの父親よりも年上のようで、軽く65歳は超えていた。お爺さんも沢山いた。ボクはお爺さんがいるのを見て「こんなお爺さんになっても性欲はあるのか」とくだらないことに感心していた。

 ボクが劇場に入って最初に気になったのは、誰も席に座っていないことだった。それに誰もハッテンしている感じでもなかった。

 みんな立ったまま、ずっと映画を鑑賞してたんだろか?
  
 ネット上の文章を読んだ限りは、かなり過激なことをしているみたいだったけど、「意外とそうでもないのかな?」と思った。

 ただ、劇場の角にトイレのような場所があるみたいで人が出入りしていた。そこから何とも言えないドロドロとした空気が漂っていた。あのトイレに入ったら、絶対にヤバイと思った。

 こんな状況にいれば、当然に大学生のボクに注目が集まってくる。

 トイレから出てきた人たちは、ボクの姿に気がついて、じっと見つめてきた。中には腕を組んで徐々に近づいてきて、ボクの反応を伺っている人もいた。

 状況的に、20代はボク1名。残り65歳〜80歳は15名だった。少しは同年代の客がいると思ってたのに、絶望的な状況だった。

 ボクは「席に座ったら全員から襲われる」と思って、座らずに彼らと一緒に立ったまま映画を見ていた。

 そして映画を集中して見ることで、「ハッテンには興味がない」という雰囲気を作ろうとした。視線を合わせると勘違いされそうなので、ひたすらスクリーンに集中することにした。

 ただ……どんなに頑張って集中して映画を見ても、映画の内容は全く頭の中に入ってこなかった。

 集中できないのに理由があった。いつ年配の人たちから襲われるかという恐怖心があった。ただそれよりも映画に集中できない、もっと大きな理由があった。

 それは映画が、とんでもないレベルで酷かったからだ。

 この映画……絶望的につまならい……なんて酷い映画なんだろう。

 そんな失礼なことを思っていた。上映中の映画のタイトルは覚えていないけど、あまりに酷い内容だった。製作者には申し訳ないけれど、なんの深みも感じられない映画だった。

 それに出演している大学生風の男性の演技も酷かった。よくNHKの教育で、小学生や中学生が出てきて、学校内で起こる問題を描いている番組がある。その子供たちの演技より数倍は酷かった。あまりに演技が下手すぎて呆れ返ってしまった。

 映画の内容はほとんど覚えていない。
 
 たまたまボクが劇場に入ったタイミングなのか、上映中の映画はアダルトとか全く関係がなかった。若い大学生くらいの男性二人が防波堤で語り合っているシーンだった。

 そこで「あっ見て!」と棒読み丸出しの演技で、男性が空を指差した。オモチャのような不思議な円盤が飛んでいた('ヒュ〜ン'とウルトラマンで使われるより安っぽい効果音だった)。それから二人で「あれは何だ?」と驚きあっていた。ボクはあまりの酷い映画に、集中して映画を見るという演技すらできなかった。「ははははっ……これは酷い」と口を開けたまま呆れ返った。

 でも周囲を見渡すと、真剣に映画を見ているお客が何人かいた。 

 この年配の男性たちは、こんな酷い映画をよく真剣な顔をして観ていられると、別の意味で驚いてしまった。映画の内容の酷さと、その映画を真剣な表情で見ている姿を見て、ボクは口に手をあてて「クスクス」と声を出して笑ってしまった。笑いを抑えていても、あまりに酷い映画だったから、途中から肩を震わせて笑い出してしまった。

 ボクの様子を伺っていたお爺さんたちは、「なんでこいつ笑ってるの?」と不思議そうな表情をしていた。

 ここまでで映画館の滞在時間は7分くらいだった。

<つづく>

失礼な表現が多くて申し訳ありません。ただ……本当に酷い内容だったんです。ボクはこの映画館しか行ったことがないのですが、他の映画館はどうなんだろう?