ゲイ集う成人映画館の手記<13>

 上映中の映画は酷い内容で全く面白くなかったけど、むしろ酷い映画を、みんなが真面目な顔をして見ているというシチュエーションがおかしくて、ボクは肩を震わせて「クスクス」と声を出して笑っていた。

 酷い映画を観るともなく観ていると、劇場の隅の真っ暗な場所から人が出て来たのに気がついた。トイレとは違って、真っ暗で先に何があるのか分からなかった。

 そういえばシネ・フレンズ の体験談を読んだ時に「地下室」があるって書いてあったな。

 シネ・フレンズ の体験談はネットの沢山落ちていて、特に2ちゃんねるには色々なことが書かれていた。その中で「地下室」があると書かれていたの思い出した。

 もしかしたら、あそこが地下室の入り口なのかな?

「地下室」という秘密めいた響きに惹かれるように、自然とそちらの方に歩いていった。どんな場所なのか一目でいいから見たかった。入り口に立って中を覗くと、ほとんど真っ暗な状態で足元が見えなかった。壁に手を当てて、コケないように慎重に歩き出した。

 この地下室の中で何が行われてるんだろう……

 ボクは緊張しつつも地下に向かって階段を降りていった。階段は少し冷んやりとした空気が漂っていた。

 やっぱり乱交とか行われてるのかな……

 前にも書いたけど、ボクだって「性欲」はある。実際にしたことはないけど、複数で乱交してみたいという願望だってある。地下室で行われていることを想像して歩いているだけで、下半身は反応してしまった。

 慎重に壁に手を当てながら階段を降りていくと赤い光が漏れた入り口があった。入り口まで歩いて勇気を出してそっとドアを開けた。

 そして部屋の中を覗いた。
 
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 言葉にならないものを見てしまった。頭の中が一瞬でショートしてしまった。そして勢いよくドアを閉めた。ほんの30秒ほどしか部屋の中を覗かなかった。

 それから逃げるように壁に手を当てて階段を登り始めた。ボクが降りて行ったのを見て追いかけて来たのか、かなり年配の男性が2人ほど階段を降りて来た。ボクは歩くペースをあげて、「すみません」と頭をさげて彼らの横を通り過ぎた。彼らがじっと見つめる視線が痛いほど暗い道の中でも突き刺さった。

 そして劇場に戻って酷い映画を観ながら、さっき地下室で見たものを思い出していた。

 地下室は2畳から3畳程度の広さだった。狭い部屋を赤い照明が照らしていた。布団だったか何か床に敷いてあった。

 そして部屋の中に一人男性がいた。

 かなり年配の男性だった。70歳後半だったと思う。昔は鍛えてたんだろうなという肉付きのある体型をしていた。首輪のようなものをつけていた。そして床に寝転がって顔を上げてドアの方に向けて大股を広げていた。

 その男性は全裸だった。

 ボクと目が合うと、「こっちに来なよ」という風にクネクネと手招きした。その男性の股間は、かなり立派なものが元気にそそり立っていった。

 ボクは生まれて初めて、あそこまで年配の男性の股間をモロに見てしまった。

 せっかく「こっちに来なよ」と誘ってくれたけど、失礼ながら「誰が行くかよ」と思った。そう思うと自然にドアを閉めていた。

 地下室で見た光景を思い出して、さらに酷い内容の映画を真面目な顔をして見ている人たちを見て、声を出さないように劇場に隅に立って笑った。あまりにずっと笑い続けているのが不気味に見えたのか、劇場にいたお客もボクの方に近寄ってくることはなかった。

<つづく>