一人のホモが悩む年齢という呪縛<承編>

 ボクは自分よりも年上の人が好きだった。せめて同じ年くらいで、年下になると恋愛対象にすら考えていなかった。

 大学時代の頃は、相手が50代になると少し抵抗があったけど、40代までの人であれば、特に抵抗もなかった。先日、本屋で50代の方が立ち読みをしていたんだけど、その方を見てドキドキしたから、既に50代もボクの中では恋愛対象に入っていると思う。

 こういった状態だから、ネット上で年上バッシングする人たちの気持ちが理解できなかった。

 年上バッシングをしている人たちを見ると、

 この人たちは自分が歳を取るということを理解してるんだろうか? みんなに等しく訪れる老いから、自分だけは逃げ切れると思っているんだろうか?

 書き込みを眺めながら、「なんて想像力のない人たちなんだろう」と不思議に思っていた。

 ボクが年上が好きなのには理由がある。

 ボクは誰かから世話されるのも、誰かを世話するのも嫌だった。

 あくまで相手と対等に接していたいと思っていた。そう考えた際に、年下の人よりも、年上の人の方が理想だと思っていた。自分がしっかりしていれば、相手に世話になることもないし、年下の立場から年上の世話することもないと思っていた。だから年上の相手の方が理想的で、相手と対等にいられると思っていた。

 このサイトのコメント欄に、「福岡に行くので会いませんか?」というコメントを、一番最初に投稿してくれたのが「なおさん」だった。

 彼は20代中盤で同じ九州に住んでいる。彼もブログを書いているので、ここリンクを貼ってもいいのだけれど、それはなんとなく望んでいない気がするので貼らないでおく。

 なおさんは容赦が無かった。

 ボクは年下が苦手だ。相手が年下だろうと敬語で話してしまう。

 コメント欄に「TO:なお様」と書いて、よそよそしい言葉を使っていたら、「様は止めてください」とコメントがあった。

「様」を付けたり、よそよそしい言葉で書いていたのには理由がある。さっきも書いたけど、ボクは誰かに世話になるのも世話するの嫌だったから、基本的に誰に対しても対等に接していて馴れ馴れしくはならない。ネット上に限らず仲良くなっても相手に対して、どこかで線を引くようにしていた。そんなボクを考えを見透かしていないとは思うけど、厳しく指摘してきた。

 最初の連絡以降も「会いませんか」とメッセージが何度か来た。

 ボクは彼からメッセージを受け取るたびに、背中を蹴られているように感じた。いろいろと活動している背景には、彼からの後押しというか、強烈な背中蹴りがある。

 そして、なおさんから勧められて、今年の3月に『逃げるは恥だが役立つ』と言うドラマを見た。

 去年くらいに流行ったドラマらしいけど、ボクはあまり流行に興味がない。5年経って、まだ作品として名前が残っていたら見る可能性があるけど、流行している作品を見ようとは思っていなかった。

 なおさんから送られたメッセージの中には、

主人公の「津崎平匡」という登場人物が、ボクに共通してる所があるような気がするので、是非見てください

 と書いてあった。

「津崎平匡」という登場人物を誰が演じているのか見てみると「星野源」だった。「えっ……星野源とかレベルが高すぎるよ」と頭をかかえてしまった。

 なおさんの言う共通点って……絶対に顔じゃないはずだけど、どこなんだろう?

 そう思いながら、ドラマのホームページやwikiを眺めていた。実際には、なおさんも思ってなかった共通点が見つかってドラマを見ることになるんだけど、それはボクとなおさんとの秘密にしておく。

 なおさんから勧められた、このドラマを見ながら、

 彼は相変わらずボクにプレッシャーをかけてくれるよな……

 そう苦笑いをしていた。

 このドラマだけど、いくつかテーマがある。そのテーマの一つが「年齢差を超えた恋愛」だったように思う。

 主人公二人のカップルの年齢差が10歳。そしてもう一組のメインキャストのカップルの年齢差が17歳。ゲイのキャラクターも出ていて、正確な年齢は公表されていないけど年齢差が軽く20歳はあるはずだ。

 そう……ドラマに出てきて作中で新たに結ばれるカップルは、全員が「年齢差」が激しい。

 その「年齢差を超えた恋愛」というテーマに対して、「ある登場人物」が「ある台詞」を言っている。その言葉がとても素敵だった。

<つづく>