恐るべき子供たち<2>

 あの日、年末年始の帰省のため京都駅にいた。

 ボクは新大阪方面に向かう新幹線に乗るために、プラットホームに立っていた。 近くには家族連れがいた。父親と母親。そして男の子が二人。兄弟らしく、兄が小学生3年くらいで、弟が小学1年くらいだった。

「岡山駅で、おじいちゃん達がホームまで迎えに来てくれてるからね」
「うん」
「岡山駅で降りるのよ」

 母親らしい女性が、子供達に心配そうに声をかけていた。どうやら家族全員で帰省するのではなく子供達二人だけで京都駅から新幹線に乗って岡山駅まで行くようだ。まだ帰省ラッシュには少し早くて、ボクも大学の試験が終わって暇になったから、少し早めに帰省しようとしているところだった。

その後も母親は、『岡山駅』という言葉を何度も繰り返していたので、「この子逹は岡山駅で降りますのでお願いします」をいう、周囲に対するアピールにも思えた。指定席の車両だったので、確かにここで『岡山駅』で降りるとアピールしておけば、誰かが面倒を見てくれるだろうと思った。

「何かあったら、この中にお金が入ってるからね」

 そう心配して小さい小銭入れを渡す両親をよそに、子供達はニコニコと笑って楽しそうだった。子供たちは全く緊張してなさそうだった。彼らにとっては冒険のようなものなのかしれない。

 なんだか微笑ましいな……

 可愛い兄弟だった。仲の良い兄弟のようで、落ち着いた兄に対して、落ち着きがない弟が何度も甘えていて「お兄ちゃん大好き!」オーラが全開状態だった。ボクはショタコンではないけど、ちょっと目覚めそうになってしまった。

新幹線が来て、自分の座席を探して3人がけの通路側の席に座った。通路を挟んだ隣の2人がけの席に、さっきの兄弟が座っていた。そして窓ガラス越しに両親に手を振っていた。あまりの微笑ましい光景に、「しょうがない。ボクがきちんと岡山駅で降りるように2人を監視しておくか」と思った。

 新幹線が動き出すと、すぐに2人はリュックサックの中から、沢山のお菓子を取り出して座席のトレーを出して並べ始めた。早く食べたくて待ちきれないようだ。

 あぁ……やっぱり微笑ましいな。

 しばらくして2人を見るとお互いのお菓子の交換をしたりして、「あーん」して食べさせ合ったりしていた。

 あぁ……なんて理想的な兄弟なんだろ。お兄さんも「あーん」されてみたいよ。こんな見せつけるようなBL行動は止めてくださいよ。

 そう思いながら、駅のホーム内の書店で適当に買った小説を読みながら、チラチラと隣の兄弟を盗み見していた。ボクは兄弟のおかげで、すっかりショタコンに目覚めてしまいそうだった。もはや兄弟が岡山駅で降りるのを監視する以前に、別の誰かがボクの行動を監視したほうがいいのかもしれない。

 車両の中で一番ヤバイのはボクだと思った。

 でも……一番ヤバイのはボクではなかった。

<つづく>