ゲイとして生きる君へ

中学時代に同性愛に目覚めカミングアウトしてました。過去や現在のことを綴っています@福岡

恐るべき子どもたち<3>

 あぁ……なんて微笑ましい兄弟なんだろう。そういえばボクと兄貴の間にもあんな時代もあったな。

 ボクにも兄貴に憧れた時期があった。幼い頃は、兄貴がやってることを真似ばかりしていた。例えば兄貴が何かを買ってみれば、同じように真似して買ってみたり、ある音楽を聴いていたら同じように真似して聴いてみたり。兄貴の方も自分に憧れる弟に対して、愛情を注いでくれていた。

 ボクが中学時代になった頃からだろうか、徐々に兄貴離れをしていった。関係がないと思うけど、ちょうどボクが同性愛に目覚めた頃だったかもしれない。自分の世界を構築していくにつれて、兄貴から離れていった。

 そんなことを思いながら、新幹線は京都から出て大阪に入っていた。さっきまで隣の席で、なんやかんやとお菓子を食べて騒いでいた兄弟から声が聞こえなくなった。

 あれ……なんか隣の子供たち静かになったな?

 そう思って、心配になって通路先の隣の席を見た。そしてボクは固まってしまった。

 ええええぇぇぇえぇ! 君たち何してんねん!

 自分が見た物が、「現実の出来事」であるのか「妄想の出来事」なのか、すぐに判別できなかった。それくらい驚くべきことをしていた。

 ボクの目の先に映ったもの。それは兄弟がキスしている姿だった。

 なんでこんな展開になったんだろう。

 錯乱した頭の中で、吉本新喜劇のテーマ曲が流れ始めて、いきなり『島木譲二』が登場して上半身裸になって『パチパチパンチ』をしていた。そして「どうやーどうやーどうや?」と叫んでいた(島木譲二知らない人いたらすみません)。

 兄弟は座席に座って向き合ったまま長い間キスをしていた。

 しばらくして唇を離すと、再びキスを始めた。今度は短いキスの連続だった。何度も何度もキスを重ねていた。唇を重ねる音が「チュパチュパ」と周囲に響いていた。

 えーと。君たちは何をしてるんだい?

 小学生低学年に翻弄される大学生。周囲を見渡しても彼らの異常な行動に気がついている大人はいなかった。

 数分間に及ぶ長いキスの後、兄弟は顔を離してお互いの顔を、真剣に見つめ合った。ボクはあまりの異常な出来事に小説を読むふりをしながらも、視線は隣席に釘付け状態だった。しばらく笑顔で向き合った後、兄弟は再びキスを始めた。どちらかが一方が無理やりキスしている感じではなくて、お互いにキスすることが楽しくてしょうがないという感じだった。いや……どちらかと言うと弟の方が兄にキスをせがんでいる状態だった。兄の方も弟からせまがれて、「しょうがない」といった顔をししつも、弟が可愛くてしょうがないようで、キスをしながら弟の髪をなであげたりして、大人顔負けのテクでキスをしていた。

 この子たち……いったい何回キスするんだろう。

 止むことのないキスの嵐に、『ニュー・シネマパラダイス』という有名な映画の、ひたすらキスの連続を繰り返すラストシーンを思い出した。

 君たち。ここはハッテン場じゃないんだよ。新幹線の中だよ。そもそも新幹線にもハッテン車両なんてあるのかい?

 ボクがこっそりと見ていると、窓側の席に座っていた弟と目が合った。弟はボクと目を合わせながらもキスを止めなかった。それから弟は兄の耳元に何かつぶやいた。「隣の人が見てるよ」とでも言ったのだろうか。兄の方もボクの方を見てきた。二人とも照れくさそうに笑った後、再びボクに見せつけるようにキスをしてきた。

 ボクの錯乱した頭の中で島木譲二が再登場した。

神原「あかん!頭がボーっとしてきた。頭の中が……」

兄弟「チンチラポッポ!」

神原「言うな〜!」

神原「困った。困った……」

兄弟「こまどり姉妹!」

神原「言うな〜!」

神原「まいった。まいった……」

兄弟「マイケル・ジャクソン!」

神原「言うな〜!」

 そんな感じで、ボクの頭の中の島木譲二は、幼い兄弟に弄され続けていた。

 新幹線は新大阪に到着した。駅に近づくと彼らはキスを止めてお菓子を食べ始めた。

<つづく>