ゲイとして生きる君へ

中学時代に同性愛に目覚めカミングアウトしてました。過去や現在のことを綴っています@福岡

小説家の仮想空間カムアウト<2>

ここ数ヶ月間、福岡市の天神のジュンク堂に行くと2階の単行本コーナーに必ず訪れる。そして作者氏名別に並んでいる『あ行』の棚の前に立って、浅原ナオトさんの『彼女が好きなものはホモであって僕ではない』が置いているか確認をしている。

ボクは別に作者でもない。だから、この本が売れようが売れまいが気にはならないはずだ。

それなのに、何故か気になって確認に来てしまうから不思議だ。実際に会ったこともない、見ず知らずの作家の本の存在が気になっている。なんで気になってしまうんだろうと不思議に思ってたんだけど、最近になって答えが見えてきた。

初めてジュンク堂に訪れたときは、4冊ほど置いてあった。

ボクはこの小説をkindleで購入していた。そして初めてジュンク堂で見かけた時に、紙書籍でも手元においておきたいと思ったので購入した。

次にジュンク堂に訪れたときは、2冊ほど置いてあった。

おぉ……これは徐々に売れてきてる証なのかな? それともスペースを確保するために冊数を減らしたのかな?

期待と不安が入り混じりながら、棚に置かれた『彼女が好きなものはホモであって僕ではない』を眺めていた。
 
その次に訪れたときは、本が全く無くなっていた。

しばらく『あ行』の棚の前で呆然としてしまった。

 他の行の棚に間違えて置かれているんじゃないかと思って探してみたけど見つからなかった。何度も『あ行』の棚を見返してみても、目に入るのは『あさのあつこ』さんの本ばかりだった。

どーでもいいことを書くけど、このサイトで文章を書く上で一番参考にしたのは『あさのあつこ』さんだったりする。

社会人になったある時期に、児童文学作品を読み漁ったことがある。日本から海外の児童文学作品を手当たり次第に読み漁った。そんな中で男性よりも、女性の児童文学作家の文体が好きだということに気がついた。『瀬尾まいこ』さんや『森絵都』さんのような、なんだかほのぼのとした優しい感じの文体に好感を覚えた。

そして女性の児童文学作家の『あさのあつこ』さんの『ある小説』に目が止まった。

その小説の文体が、あまりに好きになってしまって、まるまる写経してしまったぐらいだ。だから彼女の文体が、このサイトの文体にも少なからず影響を与えてている。ゲイをテーマにしてハッテン場や性にまつわる内容を書くと、どうしても重々しくなってしまう。でもそれは避けたいと思っていた。そんな理由で、女性の児童文学作家の持っている優しい感じの文体を意識して書くようになった。

ただ文章レベルが違いすぎるので、あくまで意識して真似しようと頑張っているだけだと……とどめておく。

そうしないと彼女たちのファンから殺されてしまう。

話を元に戻そう。

『彼女が好きなものはホモであって僕ではない』

この本が、全部売り切れたと解釈すればいいのだろうか? それともは売れないから書店に置くつもりが無いと解釈すればいいのだろうか?
 
3階にある『ジェンダー論』の棚に行ってみた。専門書コーナーで同性愛関連の書籍がまとめて置いてある。でも、そこにも浅原さんの小説は置いてなかった。

紙の本は形になって残るのがいい。

よくそう言ってる人をみかける。でもボクはある意味において紙の本は残らないと思ってる。

確かに本を買った人の家には残っている。でも書店には残らない。小型書店には残らないし、大型書店でも1冊残ればいいほうだ。

毎日のように似たような新しい本が発売されている。そして本屋のスペースを確保するために、本同士が戦っている。戦いに敗れた本は棚から消えていく。だから作家たちは自分の作品が少しでも長く書店に残るように、twitterやブログを使って宣伝して応援している。ボクは出版業界について無知だけど、単純にいい作品を書けば売れたり、長く作家として活動を続けられる時代は終わってるのだろう。最近、大仰な言葉が書かれた帯のついた自己啓発本ばかりで、本屋にいる時間も短くなってしまった。本屋に入って長く滞在するのは、詩集や画集などが置いている棚になってしまった。

もう『彼女が好きなものはホモであって僕ではない』は置いてないだろうな……

そう思いながら3週間前くらいに『あ行』の棚の前に立った。

ただ、ボクの予想外の展開が起こっていた。

0冊になっていた本は補充され、10冊近く置かれていた。

それも今までの背表紙だけが見えるように他の本と一緒に並べられているのではなく、表紙が見えるように置かれていた。

このまま消えなくてよかった……

『あ行』の棚の前で、喜んだのも束の間。

僕は男性でありながら男性を愛する人間、即ち、同性愛者です。

数日後。作者の浅原さんが、いきなりカムアウトした。 

 

<つづく>