恐るべき子どもたち<9>

子供たちは性欲と食欲という欲しいままにしていた。

ボクはショタコンに覚醒しないように必死だった。そんなボクの気持ちも知らないで、彼らのキスは続いていた。

そして長い苦行の末。ようやく新幹線は岡山駅に近づいた。

新幹線がホームに着くと、お爺ちゃんとお婆ちゃんらしき人物が迎えに来ていた。きっと両親から子供たちが乗っている車両番号を教えてもらっていたんだろう。子供たちが乗っている車両の前でちゃんと待っていた。子供たちは窓越しに祖父母を見つけて手を振って、新幹線が止まってドアが開くと走って降りていき、祖父母に抱きついた。

ボクは窓越しに子供たちを観察していた。

子供たちには、さっきまで大人顔負けになくらいに何度も繰り返しキスしていた面影はなかった。いたって普通の子供のように、祖父母に甘えていた。そして手を繋いでホームを降りていった。はたから見ていても、無邪気な普通の子供に戻っていた。

新幹線は広島駅に向かって出発した。

ふぅ……それにしても何だったんだろう……あの子たちは……

目を移すと、子供達が座っていた座席は空いていた。お菓子の食べかすが床に落ちていた。さっきまで子供たちが席に座って繰り返しキスしていたのが、まるで夢を見ていたかのように思われた。

子供同士でキスか……それに男同士でキスか……

子供たちが何度もキスするシーンを生で見るなんて、今後、二度と機会はないだろうと思った。

やっぱり子供って怖いな……

あの純粋で無邪気な笑顔の下に、純粋で無邪気であるが故に残酷な一面が潜んでいるのを知っている。

子供の頃にアニメの『スヌーピー』を見たことがある。

再放送だったのかビデオで借りて来たのかは覚えていないけど、チャーリーブラウンの声優が『谷啓』さんだったり、ルーシーの声優が『うつみ宮土理』さんだったりと、かなり古い感じのアニメだった。そのスヌーピーのアニメを見て、子供たちの世界が、あまりに残酷に描かれているのに驚いた。「スヌーピーって子供向けのアニメというよりは、大人向けのアニメなんじゃないだろうか?」と真剣に思った。

アニメ上では、子供たちの無邪気で優しい言葉。無邪気で残酷な言葉が飛び交っている。「でも子供ってこんな感じで優しくて残酷だよな」と、ボクは子供心に感心しながら見ていた。

ちなみに、どうでもいい話だけど、ボクはスヌーピーに出てくる『ライナス』が大好きだ。

大人ぽい面(聖書に詳しかったり、発言が大人びていたり)と、子供ぽい面(毛布を持ってたり、かぼちゃ大王の存在を信じてたり)が混在している彼が好きだ。よくチャーリーブラウンとライナスの二人が橋の上で会話してシーンがある。ある時は仲がよかったり、ある時は薄情だったりする、不思議な二人の関係が、子供らしくて優しくて残酷で好きだったりする。

<つづく>