恐るべき子どもたち<10>

そもそもボクは自分が子供の頃から「純粋」とは程遠い存在だと自覚していた。ボクが子供が怖いと思う根底には、その思いがあるからだと思う。自分のことを、とても計算高く、ずる賢い子供だと思っていた。

だから自分に似た子供なんて欲しいとも思わなかった。

むしろボク好みのイケメン男性の子供なら欲しいと思った。

中学時代には、既に同性愛者であることを自覚していたから、結婚して子供を作るのは難しいと思っていた。そんな最中に源氏物語の現代語訳本を読んだ。そして「その手があったか!」と感激した。

主人公の光源氏は、愛する「桐壷」の面影が残る、「紫の上」という少女を幼少期から手元に引き取って、自分好みの女性に育てていく。この一連の過程を読んで妄想をしていたものだ。

愛する男性の面影がある少年を幼少期から引き取って、自分好みの男性に育てていく。

そうか……その手があったのか。

「まずい。こいつ早くどうにかしないと」な状態である。でも中学時代や高校時代には、こんな妄想を本気でしていた。

大人になった今でも当時を思い出すと、懐かしく思えてくる。

そうだ。今のボクなら「たぬ吉さん」の子供が欲しい。

たぬ吉さんの子供ならイケメン確定だ。自分の手元に引き取って、自分好みの男性に育てる。大人になるにつれて、たぬ吉さんに徐々に似てくるなんて感激ではないか。えーと。数日前と同じく、数時間後にこっそり消してそうな文章を書いてしまった。

でも、これじゃショタコンになりかねない。

そうだ。こんなことを妄想している時間はなかった。「ボクは同性愛者だから子供は関係ない」と思ってたんだけど、「甥」という存在が出来た。こんなくだらない妄想をしている間にも、ボクの甥はどんどん成長していっている。早く『一問一答の問題集』を作成しなくてはいけない。

「なんでおじちゃんは独身なの?」

「……」

「もしかして、おじちゃんはホモなの?」

「……」

ここで答えに詰まったら、ボクの人生も詰んでしまう。愛想笑いをしてごまかすのが得策かもしれない。でも子供は残酷だから質問を止めない可能性もある。

中途半端な嘘をついても、いつかは「ホモ」だと見抜いてしまうだろう。

いっそのことカムアウトしてしまおうか?

「なんでおじちゃんは独身なの?」

「おじちゃんはね、ホモなんだよ。ホモブログを書いてるから、もっと詳しく知りたいのならブログを読んでみてね」

そんな回答できるわけない。

どうか読者の皆さん。何かよい回答があれば教えてください。

ボクは新幹線で会った子どもたちのことを思い出す度に「あの子達は今頃どうしてるんだろう?」と思う。幼少期の遊びとして終わったろうか? それとも同性愛に目覚めてしまったのだろうか?と想像している。

そしてあの子達のキスシーンを思い出しては思う。

やっぱりボクは子供は怖い。

<終わり>