ゲイとして生きる君へ

中学時代に同性愛に目覚めカミングアウトしてました。過去や現在のことを綴っています@福岡

ノンケに生まれ変わりたい<18>

ノンケの男性なら、彼女に恋愛感情を抱いていなくても、やっぱり抱きしめたりするんだろうか? 

ゲイの世界を足を踏み込んでからというもの、有料ハッテン場で会った、見知らぬ男性と肉体関係を持つなんてザラだった。そこに愛情関係なんてものは全くない。もはや、その辺の感覚が麻痺してしまっていて、ノンケの男性がどういった世界を生きているのか分からなくなっていた。

ちなみに彼女は美人だった。

ボクは女性に全く興味がなく、女性の顔の区別もつかないことが多い。女性アイドルグループは全員同じ顔に見える、大学時代は「モーニング娘」といったグループが全盛期だった。ほとんどテレビを見ない影響もあるけど、最後まで顔も名前も一人も覚えられなかったぐらいだ。そんなボクから見ても、彼女は美人の部類に属していると思っていた。

そもそもボクのような地味な男が、彼女と仲良くしている事自体が、周囲から見れば異常な事態に違いなかった。

「お前みたいなのが、なんで彼女と毎日一緒にいるんだよ」

そういった非難の視線はひしひしと感じていた。ただボクから言わせて貰えれば、ただの友達関係だったのだ。今まではだけど……

このままインターネットがつながらなければいいのに……

そう思っていたけど、意外と早くネットワークの問題は解決してしまった。

「繋がったみたいだよ」

と伝えると、彼女はベッドから起き上がって、パソコンデスクまでやってきた。そのままパソコンの画面に顔を近づけてくる。

ボクの目の前には彼女の顔がある。

彼女から女性特有の匂いが漂ってくる。髪から洗剤の匂いが漂ってくる。顔から化粧の匂いが漂ってくる。

これ以上、近付かないで欲しい。

そう切実に思った。彼女と手をつないだだけでも「早く離して欲しい」と思ったぐらいだ。
そして全く反応がないボクの下半身。どう考えてもボクには女性には興味がなくて、たとえ彼女が全裸になろうと勃つこともなく、むしろ萎えてしまうだろう。

彼女の距離の取り方がいつもより近いと感じた。

きっとノンケの男性がゲイから告白された時って、こんな思いを抱いているに違いない。

今更ながら、過去にボクが告白してきた男性の気持ちが分かった。

露骨に嫌な顔をして、距離を取ると彼女を傷つけてしまう。ボクは彼女に気づかれないように、少しずつ顔を離して距離を取った。

そういえば大学生になってすぐの頃、ゼミのメンバーで京都の有名な観光地に遠足に行くことになった。しかもゼミの教授からの提案で、男女のグループに分かれて庭園内を散歩して歩くという無慈悲な提案がなされた。

うわ……止めてくれぇ。

めんどくさいから逃げようかと思ったけど、教授からの命令に逆らうこともできず、しぶしぶと従った。余計な提案は止めて欲しかった。ボクは初対面に近い女性と手を繋いで庭園内を歩いた。ただ視線は前を歩いている男女のペアに行っていた。特に男性の伸ばしている手の方に視線が集中した。できるなら、女性よりは前を歩いている男性と手を繋いで歩きたいと思った。別に好みの男性でもなかったけど、一緒に手を繋いで雑談している女性に申し訳ないと思いながらも、そっちのほうがマシだと思っていた。

この教授は「飲み会は男女交互に席を分けて座るように」とか「なるべく男女は偏らないように発表グループを作るように」とか、ゲイのボクからすれば、おせっかいな提案ばかりをしてくれた。二年生になった時点で、別のゼミに異動したけど、あやうくボクもLGBT活動家になるところだった。

ボクは席を立ってパソコンデスクから離れた。

どこのネットワークの設定がまずかったのかを説明しつつ彼女から距離を取ってしゃがんだ。その後、ひたすら日常会話をしゃべり続けて、20分くらい経ってから、「そろそろ帰ろうかな」と言って部屋を後にした。

彼女はアパートの玄関まで見送ってくれたけど、ボクは逃げるように去った。

もうこれ以上は、彼女の家に行くのは止めようと決めた。

どう考えても、ゲイのボクには女性に対して恋愛感情を抱くことはできなかった。

数日後。ボクは彼女から気持ちを伝えられた。

<つづく>