言葉のしっぽ<3>

かれこれ10年以上前から『はてなブックマーク』のページを見続けている。

ネット上の注目を浴びている記事がまとめられていて、効率的に情報が収集できるのが理由だ。ほぼ毎日チェックしているサイトで、ボクは『はてなブックマーク』と『NHK NEWS WEB』をメインに情報収集している。

Hagexさんの記事は『はてなブックマーク』の上位に何度もランクインされていた。

彼の書いた文章をいくつか読んでいて、

この人って本当は頭がいい人なのかな?

そう思った。馬鹿な振りをしているけど、何か引っかかるものを感じた。そして彼のサイトを訪れてランクインされている以外の記事を読んでみたけど、ある違和感を感じていた。

やっぱり頭がいい人だけど、でも、なんでこの人は本当は頭がいいのに馬鹿な振りをして文章を書いてるんだろう?

そう思った。

ランクインされている記事と、日常的に書いている記事も書き方を使い分けているように感じて、まるで頭がいいのを隠して、ネット上の住人に愛想を振りまいているように感じた。

そして似たような印象を、Hagexさんを殺した男性が書いた文章を読んで感じた。

彼のこともHagexさんと同じように頭がいい人だと感じた。ただ彼の書いた文章はHagexさんのように馬鹿な振りをしていなかった。むしろネット上の住人を相手に敵対していた。

ほぼ同年代の二人。

同じように頭もいい二人。

それなのに対象的な人生を歩んで来た二人。

一人はネットと器用に接して、社会的にも立場が築いていた。

もう一人はネットと不器用に接して、社会的に立場が築けないでいた。

そしてHgaexさんとネット住人から、彼に注がれる沢山の言葉。

なぜ、彼の殺意がなぜHagexさんに向いたのか……

いろいろと感じるところはあるけれど、これ以上、この事件について言及しない。他にも多くの方が、この事件に関して論じていて、今更になって意見する必要がないと思っている。

それに、ボクはこのサイトに書く文章を、自分の数メートル範囲で起こったことを中心に書いている。

このサイトには時事問題に関しては触れないようにしている。例えば、カムアウトされて自殺した一橋大学の大学生の事件に関しても、いろいろと思うところはあるけど書かない。もし時事問題に触れるのであれば、もっと別の形で触れたいと思っている。時事問題を書かないのには理由があるけれど、それも書かない。

ただ、このHagexさんが殺された事件について、

ボクが感じたのは、

言葉によって心が追い込まれて、人を殺した人がいること。

言葉によって心を追い込んで、人から殺された人がいること。

その事実だけだ。

言葉は怖い。

でも一方で、言葉は優しいものでもある。

たった一つの言葉と出会って、ずっと悩んでいたことが消えて目の前の道が開けたりもする。まるでボクが悩んでいたことを知っているかのように、言葉の方からボクに近づいてくれたと感じる時がある。そんな言葉にボクは何度も救われてきた。

言葉の「負の面」だけ見ていないで、「正の面」も見ていたい。同じように言葉を使うのなら、人を傷つける言葉ではなくて、人を癒やす言葉を使いたい。

この事件を眺めながら、そんなことを思っていた。

数日後。ボクの書いた浅はかな言葉が、ある方を傷つけてしまった。

<つづく>