僕が一番欲しかったもの<6>

その後も、ボクは飽きもせずに『ゲイ向けの出会い系の掲示板サイト』を眺めていた。ただ、ボクも成長したのか、何人かのとんでもない人と出会って、徐々に用心深くなっていった。

そして、ある時期から

「絶対に会ったらいけない人リスト」

というものを作成するようになっていた。

出会い系の掲示板に、過激な書き込みを繰り返している人や、メールを送ってやり取りしたけど全く噛み合わない人や、実際に会って見たらヤバイ人など。

その人達の身長、体重、年齢をワードファイルにメモしていた。もしくは、実際に会った人などは、いつどこで会ったのか、その人の特徴などをメモしていた。「掘らせろ!」とか「ラッシュキメてやろう!」とか「公衆便所でやろう」などと言ってきた人は、残らずリスト入りさせていた。

このリスト作成は「自衛手段」だと思っていた。

こういったリストを作成して掲示板を観察していると、なかなか興味深いことに気づいた。

例えば、もう一年以上も経過しているのに、いつまでたっても年齢が上がらない人もいた。

ボクが大学を卒業するまで、ずっと39歳と自称して毎日のように書き込みをしている人がいた。その人と実際に会った人が掲示板のコメントで、「いつになったら年を取るの?」「会ってみたら50代だった」とか書き込みをされていて、ボク以外にも気がついている人は沢山いたようだ。

年齢の変更なんてありきたりだけど、例えば、

やりとりなしに サクッとしませんか? 168.58.32 投稿者:こう

という書き込みがあったとする。

その1時間後に、前の書き込みが消えて

誰かサクッとやりませんか? 169.59.32 投稿者:あき

という書き込みがあった。

名前はともかく、身長と体重が変わっているけど、同一人物だったりする。まさか1時間で身長が伸びるとは思えない。

でも別にこれくらいは「可愛い」と思うくらいで、どうでもよかった。きっと「誰からも連絡が来なくて連続で書き込みをしたと思われたくないんだろうな」と思うくらいだった。ただ「プロフ変わったの?」と糾弾するような書き込みをする人もいた。「それくらい見逃してあげなよ」と心の中で思いながら読んでいた。

他にも、ボクが

誰か一緒に食事できる人いませんか?

という書き込みをしたとする。

その数分後に

一緒に食事しよう。175.65.35 投稿者:まさ

というコメントが投稿されたとする。

ボクは喜びつつも何だか嫌な予感がして掲示板を見直してた。そしてボクの書き込みの近くに、

誰でもいいからラッシュをキメて掘らしてくれ。175.65.35 投稿者:まさ

そんな書き込みを見つけたこともザラにあった。

「この人は食事する気なんて全くないだろうな」と思えた。

他にも出会い系の掲示板でやりとりした人は、本当に変わった人が多くいた。

君は京都市内のどの辺に住んでるの?

というメールが送らて来た。

○○○○の近くに住んでます。

ボクがメールを返信した後、「ケツ掘っていい?」といった内容のメールが連続して送らて来た。「この人とはどうやら無理だな」と思って、

すみません。ちょっと合わないと思うので、これでメールを止めさせてください。

とメールを送った。すると

はぁ?お前ふざけんなよ! もうお前の住んでる所まで車に乗って向かってんだけど?お前が会いたいって言うから向かってるのに、まじでフザケてるよな!

と言ったメールが来た。「ちょっと待てくれ。まだ実際に会うとか何も会話してないのに勝手に向かったって言われても……」と思った。ただ言い返そうかと思ったけど止めて、

本当に申し訳ありません。これからは注意するようにします。わざわざこちらまで来てくださっているのに断ることになって申し訳ありません。

と、丁重に謝罪しておいた。

分かれば良いんだよ!これからは気おつけろよ。やっぱり掘らせてくれないの?
申し訳ありません。やっぱり合わないと思います。
そうか駄目か。残念だな。これからは気をつけてね。バイバイ。

彼の怒りは収まったようだ。よく分からないけど「ドS」なのだろうか?

こんな感じで『ゲイ向けの出会い掲示板』には変わった人が多くいた。

そんな風に掲示板を眺めていた、ある日のこと。ふと気になるプロフィールを見つけた。ボクは心当たりがあって「絶対に会ったらいけない人リスト」を開いて確認をした。

<つづく>