絶対に会えてよかった<3>

お笑い芸人のパペットマペットさんに失礼ですが、以下、彼のことを「パペマペさん」と書くことにする。

このパペマペさんについて、

もしかしたら……この人は覆面フェチなんだろうか?

と思った。もし覆面フェチだったら、こんなシュチュエーションに興奮するのかもしれない。でも覆面フェチだったとしても、暗闇の中で、真っ黒な頭巾をかぶっている姿は異様すぎて、これで興奮できる人はかなりの上級レベルだと思った。

もしかしたら……この人はタオルをつける箇所を間違えてるんじゃないだろうか? 

とも思った。その日は「タオルデー」だった。そりゃ「タオルデー」って、どこにタオルを巻きつけるかは厳格に決めらていないけど、頭にタオル……というか頭巾をつけるなんて斬新だと思った。

そんな感じで様々なことを思いながら、パペマペさんを見ていた。

しばらくすると彼は自分の股間に手を当て始めた。そして「ハァハァ」という吐息をもらし始めた。

どうやらボクはパペマペさんのお眼鏡にかなったらしい。

でも、ボクにはパペマペさんの相手は無理だった。日常会話では苦手だけど、こと布団の上の関係になると、ボクは人の顔を見つめながら、ゆっくりと話すのが好きだった。黒頭巾をかぶった状態では、どんな表情をしているのか楽しむこともできなかった。

よし。ここは非情になって絶対に拒絶しよう。

そう決めて、目を合わせないように下を向いて、彼の前を早歩きで通り過ぎた。ゆっくり歩いていたら彼から腕をつかまれてしまう。これだけ露骨に逃げるように歩けば、パペマペさんも自分に興味がないと理解してくれて諦めてくれるだろうと思った。

ボクは彼の前を無事に通り過ぎて、後ろを振り向かないで別の階の部屋に移動した。ただ部屋に入ってみても誰もいなかった。

みんなどこに行ったんだろう?

と思った。そして部屋に誰もいないことを確認して、カーテンをめくって出ると、すぐ目の前にパペマペさんの姿があった。

真っ黒な頭巾の中から、二つの目玉が食い入るようにボクを見つめていた。

ひええぇええぇええぇええぇええ

どうやらボクの後を追いかけて来たようだ。

ボクは再び腕を掴まれないように全速力の早歩きで逃げた。すれ違う人たちがボクと目があって、ボクの後ろに視線をうつして「ひええぇええぇ」と驚いている様子を見ると、まだパペマペさんはボクの後を付いて来ているのが分かった。

パペマペさんはしつこかった。

それから、どの階のどの部屋に逃げても、振り返るとパペマペさんが追いかけるくる姿が目に入った。頭に黒頭巾をかぶって目玉だけ覗かせて、半勃ちの股間を晒した状態で追いかけてきた。

ヤバイ……ただ怖い。何も興奮しなくて、ひたすらに怖い。

ボクは明るい場所を求めて逃げて更衣室に辿りついた。

ちょうど新しい客が来たみたいで、ロッカーを開ける客の姿が目に入った。その客とは何度か顔を合わせて話したことがあった。ボクは助けを求めてロッカールームに逃げ込んだ。

<つづく>