それにしても「奉仕」の質問について回答を始めてから、一気に話の雲行きが怪しくなってしまった。まさか書いている本人も、ここまで彼との話を赤裸々に書くつもりなんてなかった。女装の話だけをメインに5回くらい書いて、さっさと終わらせてつもりだった。
やっぱり自分の性事情の話を書くのは恥ずかしいから、なるべく控えるようにしたい。
◇
ここは有料ハッテン場の真っ暗な個室の中。
小さい部屋には布団が一枚敷いていて、ボクと40代前半の男性がいた。
40代男性「あぁー!気持ちいいな」
ボク「いい感じですか?」
40代男性「うん。ああー気持ちいい!」
ボク「こうやると気持ちいいかな?」
40代男性「もっと強くやっていいよ」
ボク「これくらいですか?」
40代男性「もっと強くやっていいよ!あぁーいいわ!」
ついさっき性事情の書き込みを控えるなんて宣言しつつも、早くも破っているかのように見える。
ボク「これはどうですか?」
40代男性「ああぁぁーあ」
ボク「これはどうですか?」
40代男性「ああぁぁーあ。ほんとうまいね」
ボクらの声が大きいのか、何が起こっているのか気になって、他の客が個室の入り口のカーテンをめくって覗いてくる。彼らは一様にボクらがやっていることに気がついて呆れた顔をして去っていく。
ボク「気持ちよかったですか?」
ようやく事が終わってから、ボクは快感のあまりに寝転がって荒い息をしている彼の側に座っていた。
40代男性「気持ちよかった……」
彼は恍惚とした表情で「よだれが出た」と言ってジュルジュルと唾液を飲み込んだ。
ボク「そんなによかったですか?」
40代男性「うん。またやってね……」
ボク「いいですよ。それにしても頑張りすぎですよ」
40代男性「だって好みのタイプだったんだもん」
この人と会うのは何度目だったろう。もう何度も顔を合わしていて、ボクは彼と会う度に、同じことを個室で繰り返していた。
40代男性「いやーうまいよね。そろそろ行こうかな」
と言って彼は立ち上がった。
ボク「また。誰かと寝るんですか?」
40代男性「うん。ちょっと店内に好みのタイプがいないか見てくる」
ボクは彼の性欲の強さに呆れるばかりだった。
ボク「じゃあ。また疲れたら『マッサージ』をしてあげますよ」
40代男性「ありがとう」
そう言って彼は個室から出ていった。
のっけから変なやり取りを書いたけど、あれは彼と寝てたんじゃなくて肩たたきしたり、背中や首や足裏を揉んであげたりしていただけだったりする。
つまり彼にマッサージしていたのだ。
<つづく>