絶対に会えてよかった<47>

彼は個室から他の男性と一緒に出てきて、廊下に立っているボクを見つけた。

「あぁーしんどい!」

そんなことを言いながらダルそうに体を引きずりながらボクの横に立って頭を肩に置いて甘えてきた。ついでに股間を触ってきたけど、それは無慈悲に手で払った。

「今日は何人目ですか?」
「二人目」

と、指を2本立てて教えてくれた。「もう……さっきのメチャクチャにデカかった。咥えてて口が裂けるかと思った」と、うんざりしながら言ってきた。そんなにしんどいなら最初から誘わなれければいいのにと思ったけど口にはしなかった。

「あぁー吐き気がする……」
「そりゃ。ボクだって一晩で二人も相手なんてしたことないですよ!」
「それもあるけど、最近は首や肩とか凝ってるんだ……」
「マッサージしてあげましょうか?」

彼は目を輝かせて「やって欲しい!」と言うので、一緒に近くの個室に入って肩を叩いたりしてあげた。それが冒頭に書いたマッサージの場面につながっていく。

その後、誰かと寝て疲れ果てている彼を見つける度に、ボクは彼にマッサージをしてあげるようになった。もしくは個室で一人で寝ているボクを見つける度に、部屋に入ってきてマッサージをせがむようになった。ちなみに別にヤラシイ意味のマッサージじゃなくて、本当に肩叩きとか首をもんであげたりした。ボクは子供の頃から、両親や祖父母のマッサージをしてあげることが多かったので慣れていた。

実を言うと、有料ハッテン場で誰かにマッサージしてあげたのは彼だけじゃない。

もしかしたら過去に有料ハッテン場で、肩叩きをしてもらったことがあるという人は、その相手はボクだったかもしれない。

彼はマッサージをしている最中も、ボクの体をいたずらして触ろうとしてきたけど、それは無視して無慈悲に手で払っていた。

「ヤろうよ?」

と何度も誘われてけど、

「あなたと話しすぎて、なんだか『兄』のように思えてきました」

と答えた。これは本心だった。

ボクは彼の生い立ちや仕事場の話など、かなり詳しく知ってしまっていて、なんだかもう他人のように思えなくなってしまっていた。彼は人懐っこい性格をしていて仲良くなってしまっていた。

「なにそれー」
「あなたと寝ると生々しくなって、『近親相姦』してる気分になってきます」

と笑いながら言うと「そうなったらもう無理だね。そう言えば俺も君が『弟』みたいに思えてヤリにくくなってしまった」と彼も笑っていた。

ボクはマッサージを続けながら、

「すごくモテますよね?」

と質問すると「別にモテてる訳じゃない」と彼は言った。

でも現実として、店に来る客の大半と彼は寝ることに性交……じゃなかった。成功していた。

<つづく>