絶対に会えてよかった<61>

ちょっとエロ小説みたいな表現が続くけど書き進めていく。

ボクはベッドの上で彼を抱きしめてあげなら、ユニフォーム越しに体を優しく触ってあげていた。とくにさっきまでとやってることは変わってないはずなのに、彼の方は豹変してしまっていた。

「一人で隠れてユニフォームを着てしてヌイてるんですか?」
「いつも隠れてユニフォーム着てオナニーしてます!」

「今日ってボクからメールの返信が来なかったらどうするつもりだったんですか?」
「君が来てくれなかったら一人でユニフォーム着てオナニーするつもりでした!」

「やっぱりマラソンの中継とか見てて興奮するんですか?」
「はい興奮します。それに後輩のユニフォーム姿の写真を見て毎晩オナニーしてました!」

書いてて恥ずかしくなってくるけど、彼はボクに身体を預けて半ば絶叫しながら答えていた。真面目で大人しそうな彼からは想像もできない言葉が飛び出して来た。ボクの方は何度か笑いそうになったけど、彼は本気で感じていたみたいだったから我慢した。

ボクは素朴に疑問を思ったことを質問していただけなんだけど、彼は異常に興奮していた。

これは終わった後に彼から言われたんだけど、

「言葉責めが凄くよかったよ!」

と感激していた。ボクはというと当時はウブで無知だったから、

「言葉責めって何ですか?」

と、キョトンとして質問していた。

どうやらボクの何気ない質問は彼にとっては「言葉責め」という類になっていたようだ。別に責めるの何もなかったから、なんだか申し訳ないことをしたという気分になっていた。もう少し後になって、言葉責めをしているゲイ動画を見て、ようやく「彼が言っていた言葉責めって、このことなのか」と納得したぐらいだった。

ボクは彼と寝ることによってレベルが上がって「言葉責め」というスキルを習得した。

そんな訳で彼は言葉責めされて大きな声を上げて感じて興奮していた。

ボクの何気ない質問に対して、「家に帰る前に山奥に車を止めて、ユニフォーム着て走ったり誰もいない森の中でヌいてから帰ってました!」とか、「仕事中にユニフォームを下に着て患者にバレないか興奮してました!」とか、秘密を打ち明けられて「いやいや……ボクはそんなこと一言も聞いてないんだけど」と、どう反応したらいいのか戸惑ってしまった。

なんだか医師という仕事をしている彼からは想像もできないような言葉が次々と飛び出してきた。

普段から家庭でも職場でもゲイであることを隠して生きていて、こういったユニフォームが好きなことも隠して生きていて、仕事柄でも我慢することが多くて、彼が日常的に精神的に抑圧されてることが察せられて不憫に思えてきた。

彼の脳内では、年下の陸上部の後輩から責められているというシュチュエーションだったらしく、それは彼が心の中で、ずっと密かに抱いていた願望だった。

ついでに言うと、ボクが最初から最後まで、ずっと「タチ」としての役目を演じたのは彼が初めてだった。

隣の部屋に宿泊している客がいるかは定かではないけれど、「こんなに大きな声を出して、隣に丸聞こえじゃないかな?」と心配になったけど、でも隣室の客も同性同士で寝てるなんて思いはしないだろう。きっとデリヘルかなんかで女性を呼び出して寝てるくらいに勘違いしてると思うことにした。ボクが部屋を出るときに顔を見られなければ問題ないはずだった。

一方的に盛り上がっている彼はともなく、ボクの方はというと彼を見ていてなんだか虚しくなってきた。

果たして彼はボクのことを見てくれてるんだろうか?

そんな疑問がふつふつと湧いてきて冷静になってしまった。

<つづく>