ゲイとして生きる君へ

中学時代に同性愛に目覚めカミングアウトしてました。過去や現在のことを綴っています@福岡

絶対に会えてよかった<71>

待ち合わせの約束時間は21時だった。

ボクは『金閣寺道』のバス停で降りて、金閣寺の向かって歩き出した。いつもなら修学旅行の学生や観光客でごったがえしている道だけど、夜遅い時間だったから誰もいなかった。バス停近くの和風料理店から三味線の音が流れていた。でも実際に三味線を弾いているような風流さはなくて、単に三味線の音を店内の放送で流してるだけのは知っていた。ついでにその和風料理店の向かい辺にアダルトビデオをレンタルショップ(流石にもう潰れたかもしれない)があって、以前から「なんで金閣寺の側にアダルトビデオなんて釣り合いの取れない店があるんだろう?」と疑問に思っていた。その店の存在に気がついた修学旅行の学生たちが「キャーキャー」言いながら騒いでいる姿をよく見かけた。

過去に何度も金閣寺に来たことはあったから、ボクはまっすぐに待ち合わせ場所の金閣寺前のローターリーに向かって歩いた。

約束した相手からは「待ち合わせ場所に到着した」とメールが着ていた。

ずっと目の先の金閣寺のロータリーの前には一台だけ車が停車していた。

あの車だな……

いつもならロータリーには観光バスが沢山停まっているけど、入り口は閉じられて真っ暗だった。そんなロータリーの入口前に車が停車していた。高級そうなスポーツカータイプの車だった。冬の寒い季節だったからエアコンをかけているのかエンジンはかけたままだった。ボクは車のそばに寄って中を覗き込んだ。すると携帯をいじっていた30代前半くらいの若い男性が顔を顔上げて目があった。ボクは頭を下げて挨拶すると相手の男性も頭を下げて挨拶を返してくれた。そして窓が下がって「乗っていいよ」と言われた。

彼とはゲイ向けの出会い系の掲示板を経由して知り合った。

どこかで会って話をしてみない?

そんな話の流れになって21時に金閣寺のロータリー前で落ち合うことになっていた。

「とりあえずドライブしながら話をしようか?」
「あっ……はい。いいですよ」

ボクは彼に促されるままに車に乗った。それまでゲイの人と車に乗ってどこかに行った経験はなかった。

これってどんな展開になるんだろう?

彼の運転する車は、他の車を追い越してすごい速さで京都市内を駆け抜けていった。あっという間に見知った京都市内の街は遠ざかってしまった。ボクは自分がどこの道を走っているのか分からなくなった。ただ京都の南に向かって走っていることだけは分かった。気がつくと高速に乗っていて、さらにスピードを上げて、ものすごい速さで京都から遠ざかっているのだけは分かった。

彼は言葉少なくて、ボクも緊張していて何を話したのかあまり覚えていない。

<つづく>