ゲイとして生きる君へ

中学時代に同性愛に目覚めカミングアウトしてました。過去や現在のことを綴っています@福岡

絶対に会えてよかった<75>

高級スポーツカーは向きを変えて、山中を激走して高速道路に再び戻った。

「いやぁ~~~ラブホテルって前から一度は行ってみたかったんですよね!」

「本当に行ったことないの?」

「本当にないですよ。初めてです!」

ボクはわざと明るそうな振りをして話を続けていた。さっき断ってしまったせいか車内はなんとなく気まずい感じになってしまっていたけど、運転している彼の顔を見ると目はギラギラしていてヤル気満々だった。ボクは本当にラブホテルになんて行ったことはなかったんだけど、きっと彼はボクの言葉を信じていなかったと思う。

とにかく彼としてはボクとヤレればよかったんだと思う。

しばらくすると高速道路から降りて京都市内を走り始めた。少しだけ西京極のような建物が見えたような気がした。

もしかして京都市内の南区あたりで高速を降りて、今は西区あたりを走ってるのかな?

やっぱり自分がどこを走っていたのか分からなかったけど、文章を書きながら地図を観比べていると「名神高速道路」を走っていたのかもしれない。そして「京都南」あたりで高速道路を降りたのかもしれない。ただ全く知らない山中から京都市内に戻ってきたことが分かって安心していた。

時計を見ると彼と出会ってからまだ1時間も経っていなかった。そんな短い時間で京都市内から高速に乗って山の中まで行って、京都市内に再び戻ってきていた。

「あのホテルだよ」

彼が指さしている先に大きいホテルがあった。そのホテルの背後に急な坂道があったのを、なぜかはっきりと覚えている。まだ早い時間帯だったので帰宅中のサラリーマンが坂道を自転車を押しながら上っていた。

かなり大きなホテルで「これって普通のビジネスホテルじゃないの?」と思ったほどだった。ラブホテルと言えば、山の中にある姿を想像していたので、京都市内の街中に忽然と建っているホテルに連れていかれるなんて想像もしていなかった。

ボクの実家は田舎だった。まだ小学時代の記憶だけど、真夜中に父親が運転する車に乗って山中を走っていると、カラフルなライトに照らされた大きめの建物が目についた。

「あの……お城みたいな建物はいったい何なの?」

と、ボクは兄貴と一緒に無邪気に両親に質問していた。

でも父親も母親からは無視されてしまった。当時は「遊園地か何かなのかな? 楽しそうな場所だな?」と思っていたけど、大人になって「あれはラブホテルだったんだ」と気が付いた。知らなかったとはいえ随分と際どい質問をしていたと思う。

ラブホテルの入口は交通量の多い広い道路に面していた。

「男同士でホテルに入るのを見られるとまずいから屈んでもらえる?」

と彼が言ってきたので、ボクはシートベルトをつけたまま屈んで顔を見られないようにした。車はホテルの中に入ったようで車内は暗くなって坂道を下り始めた。そしてしばらくして走ってから停車した。

<つづく>