ゲイとして生きる君へ

中学時代に同性愛に目覚めカミングアウトしてました。過去や現在のことを綴っています@福岡

ゲイとしての居場所作り2018年秋<5>

落語会が終わってポケットからスマホを取り出すと、LINEの通知表示がされていた。

福銀ビルの地上の芝生の上にいます。

そのメッセージを読んでから急いで出口に向かった。階段を上って地上に出ると、先ほどまで高座に上がっていたはずの『春風亭昇太』がいた。

メッセージの送り主は『春風亭昇太』だった。

なんだか眠たそうな顔をしていて、ボクはちょっとだけ歩くペースを落として彼の姿を眺めていた。しばらく眺めていると彼もボクの姿に気がついた。手を上げてお互いに気がついていることを合図した。こっそりと会わないと週刊誌の記者に見つかって大変なことになってしまう。

ボクはその人に近づいてから「お待たせしました」と声をかけた。彼も立ち上がって一緒に歩き出した。

その日、落語会が終わってから『春風亭昇太』と会う約束をしていた。

というのは……真っ赤な嘘だ。

ただ目の前の彼はそこはかとなく『春風亭昇太』に似ていた。

念のために書くけど、さっきから書いている「彼」とはボクが付き合っている彼だ。文章で「彼」のことについて書くのに、毎回「付き合っている彼」とか説明するのも困るので、いっそ名前で書くことにする。かといって本名を書くわけにはいかないから、いっそ『春風亭昇太』から名前をもらって『ショウタ』と書くことにした。

細かく説明すると『春風亭昇太』から名前を拝借したのは理由がある。

なんとなく顔の雰囲気が似ているからだ。

以前、ショウタさんに「何となく顔立ちが『春風亭昇太』ぽいですよ」と伝えると、全く嬉しくなさそうな、とても微妙な顔をされてしまった。ボクとしては最高の褒め言葉なんだけど、「こういう顔でありたい」という願望は人それぞれなので嬉しくなくてもしょうがない。

「もうパレードって終わってますよね?」

落語会が終わったのは15時45分を過ぎていて、既にパレードは終わってしまっていた。パレードはFFGホール側の渡辺通の交差点を横切るコースだったので、もしかしたらショウタさんが見ていたかもしれないと思ったけど、どうやら彼が天神に来た時にはパレードは終わっていたようだった。

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結局、二人揃ってパレードを見逃してしまった。

福岡の街は連日晴れていて散歩日和だった。その日はもともと落語が終わってから夕飯の時間まで、福岡市内のどこかを彼と散歩する予定だった。でも、どこを散歩するのかを決めるのは、ボクの担当だったはずなのに全く決めていなかった。今までのボクなら事前に決めておかないと気がすまない性格なのに、最近はいい意味でいい加減になってきているように感じる。

「まだ九州レインボープライドはやってると思いますし、冷泉公園に行ってみますか?」

そう誘ってみたけど、ショウタさんは「うーん」と困った感じの反応だった。ボクも誘ってみたものの、冷泉公園を一緒に歩いてみたいという願望はあったのだけれど、彼の場合は地元ということもあって、ボクよりも望んでいない思わぬ知り合いに会う可能性が高いから「行かない方がいい」とも思っていた。

じゃあ。どこに行こうかな?

悩んでいた所、たまたま「福岡タワー行き」のバスが通っているのが目についた。そのバスはちょうど目の前のバス停に止まった。

そうだ『百道浜』に行こう。

どっかの広告文句に使われてそうな言葉だけど、そう瞬間的に決めた。過去にも何度か百道浜を一緒に散歩したいと思っていた。でも台風が来たりとタイミングが悪くて断念していた。

ボクは彼と一緒にバスに乗った。天神から百道浜に向かう途中で、冷泉公園で見たことや感じたことを説明した。

<つづき>