ゲイとしての居場所作り2018年秋<17>

ボクらは福岡タワー前の終着でバスを降りてから、コンビニコーヒーを買って百道浜に向かった。

九州レインボープライドに行った時間帯は日差しがきつくて暑かったけど、バスを降りたのは16時ぐらいの夕方前だったから、日差しは優しくなって気持ちよく秋風が涼しく感じられて心地よかった。まだ紅葉には早い時期で、肌寒くもなくて散歩するにはちょうどよかった。

秋の百道浜は人が少なかった。

ちなみに彼と初めて関係を持ったのは、百道浜のホテルだった。

ボクが場所を決めたんだけど関係を持った当日の夜か翌日の朝に一緒に百道浜を散歩しようと計画していた。でも残念ながら台風が直撃してしまった。風は強くなかったけど雨が降っていたので断念せざるをえなかった。

そういえばホテルに泊まった翌朝、朝食を食べながら、たまたまレストランでカーペンターズのCDが流れていた。彼はご機嫌な感じで他の客に聞こえるのも気にせずに『トップオブザワールド』を口づさんでした。ボクはそんな風に呑気に歌っている彼の姿を見て「このマイペースさが好きだ」と、よく分からないポイントでドキドキしてしまった。

そんな話は置いといて、何度か百道浜に行こうと思ったけど時間帯が遅かったりして断念が続いて、ようやく念願が叶った。

最近は「どこに行こうか?」と決める時に、なるべく人が少ない場所を選んでしまう。

以前、博多駅と天神で一日に二本続けて映画を見た際は、人が多くてお互いに疲れてしまった。なんだか人間酔いしたような気分になった。それで話し合った結果、「お互いに人が少なく方が向いている」ことが分かったので人がいない方に向かって行動するようになった。

たまたまなのか、ゲイの出て来る映画の『ブロークンバックマウンテン』や『君の名前で僕を呼んで』で、山の中でじゃれ合っているシーンが出てくるけど、人目を忍ぶような場所に自然と向かってしまうんだろうか?とか想像した。そうえいばボクらも先日も福岡県のある山に一緒に上ったばかりだった。

彼と付き合い始めてから、一人だったらなかなか行くことができない店や場所に行けるようになったから嬉しい。

彼と百道浜の桟橋に腰をかけて、男が二人組で歩いてのを見て「あの二人はゲイのカップルじゃない?」とか、男が集団で集まっているのを見て「あの集団はゲイのグループじゃない?」とか、どーしよーもな超絶にくくだらない会話をしていた。

少し前、彼にボクの家の合鍵を渡した。

もうお互いの家どころから実家の住所も知っていて、鍵を渡すことに対して全く不安は感じなかった。僕の家には見られてまずい物は無いし自由に入っても構わなかった。

鍵を渡した日の朝。ボクは仕事に出勤するために彼を残して先に家を出たんだけど、夜に家に戻ってから玄関のポストに鍵が入れてあって返されてるんじゃないかと、心配しながら階段を登って玄関の前に立った。そしてドアを開けてドキドキしながらポストを覗き込んだ。

でも、ちゃんと鍵を持って帰ってくれていた。

ボクとしては「鍵をもらうほどの仲じゃないよ」という感じで返される可能性もあるかと思っていたので、かなり嬉しかった。それなのに夜に電話で話したら「もらった鍵は床に転がってるよ」と平然と言われてしまった。

当然なんだけど、こっちの心配とかドキドキなんて相手は全くお構い無しで、逆にそれが面白かった。

<つづく>