なんとなく彼を放置したまま去りがたくて個室の入口の辺に立っていると、彼は顔を上げてボクの方を見た。そして「一緒に寝て欲しい」という感じに腕を伸ばしてきた。
そんな弱っている彼の姿を見て下心が湧かないといえば嘘になる。
ボクがその気になれば、彼がどうなろうが知ったことじゃなく自分の性欲を彼の体にぶつけて気持ちよくなることもできたと思う。
ただ30歳を過ぎたある時期から、ボクは自分の性欲よりも相手の性欲を優先するようになってしまった。それが性欲の減退によるものなのか分からない。ただ別に自分が最後までイかなくてもどうでもよくなっていた。それに3人ががかりでも彼をイカすことができなかったのに、ボク一人のテクニックで頑張っても、とてもじゃないけど無理だと思った。
とりあえずボクにできることは彼の話を聞いて慰めてあげることくらいだった。
ボクは「しばらくの間、彼の話し相手になってあげればいいや」と思って個室に入った。そして布団の側に転がっていたタオルでローションまみれになっている身体を拭いてあげた。彼の身体は冷えていて疲れ切っているのか下半身は元気がなくなっていた。
「3人がかりで責められてイかないなんて凄いですよね」
「イキたかったんですけど……無理でした」
彼の頭を優しく撫でながら話していると頭を突き出して個室を覗いてくる人がいたけど、誰も入ってこなかった。「3人がかりで責めてもイカなかった奴によく手を出したな」とでも思っているのかもしれない。
彼と話していると最初に会った時と同じように甘えるように抱きついてきた。ボクも彼の体を抱きしめてあげた。冷えた身体を温めてあげようと思った。そう思ってボクの両腕が彼の首の後ろの辺に触れた時のことだった。彼の体がビクッと大きく震えた。
あれっ?やっぱり何かおかしい。
最初に彼に会った時もそうだっだけど、首の辺に触れると身体を震わせるようだった。ボクは疑問に思って試しに首の前辺りにキスをしてみたけど、彼の反応は全くなかった。
うーん。やっぱり違うのかな?
次に耳の下辺りにキスをしてみたら、彼は小さく吐息をもらした。
あれっ?やっぱりそうなのかな?
最後にもう一度、首の後ろの辺りをキスをしてみた。彼は大きな声を出してビクっと身体を震わせた。
あれっ?絶対にそうだ!
彼を抱きしめて両手で優しく首の後ろ辺りを撫でてあげた。さっきまで萎えていた下半身が一気に元気になった。さっき3人同時に責められていた時には、彼の首筋を触ったりキスしたりしている連中がいなかったことを思い出した。
ボクは彼の性感帯に気が付いてしまった。そして直球で質問してみた。
「もしかして耳の下とか首の後ろの辺を触られると気持ちいいんですか?」
彼は恥ずかしいのかボクの腕の中に顔をうずめて「はい……」と答えた。
<つづく>