ゲイとして生きる君へ

中学時代に同性愛に目覚めカミングアウトしてました。過去や現在のことを綴っています@福岡

二度と戻りたくない場所<1>

ボクらは二人して震えながらポケットに手を入れて「寒い!」と叫んでいた。

そんなボクらの頭上を爆音を立てながら飛行機が通り過ぎた。

「ギャー怖い!」

ボクらの頭上のほんの数十メートル上を飛行機が爆音を上げながら通り過ぎていった。飛行中の機体にここまで接近したのは初めての経験だった。飛行機が近づいているのは分かっていたけど、まさかここまで爆音だとは思っておらず耳を塞ぐタイミングを完全に逃してしまった。

ボクらは「怖い!」と怯えながらポケットに手を入れて「寒い!」と叫んでいた。

パニックになって怖いのか寒いのか、どっちを優先させていいのか分からない状況だった。ふと彼の手を見ると手袋をはめていないことに気がついた。ボクは自分の手袋を片手だけはずして彼に貸してあげた。そしてお互いに手袋をした手をポケットから出して手を繋いで歩いていた。

こんなことが同性同士で堂々とできるのも周囲に人がいないからだ。

この日はクリスマス直前だった。そんな時期だから福岡の街は夜でも賑やかなはずなんだけど、でもボクらがいる場所は人が全くいなかった。そもそもボクらが、なぜ夜にこんな人気のない場所を歩いているのかというと、彼のある提案がきっかけだった。

この日、ボクらは福岡市から離れて車で遊びに行った。その帰り道、彼はカーナビを見ながら「ちょっと寄ってみたい所があるんだけどいいですか?」と言い出した。ボクは目的地の説明を聞いて興味を惹かれて「いいですよ」と言った。

ボクらの乗った車は、それなりに渋滞していた国道を右折して抜け出した。車が脇道に逸れた途端に急に辺りが暗くなった。ほとんど街灯も無くなって人の姿も見えなくなった。

目的地の駐車場に車を停め降りてから、彼は「よくこんな場所見つけるよね」と言った。ボクは「そうですね」と答えながら周囲に目を向けていた。

この雰囲気。懐かしいな。

隣にいる彼は全く気が付いていなかったけど、ボクには見覚えのある景色ばかりだった。彼は「こんな場所に本当に人はいるのかな?」と疑心暗鬼だった。ボクは「むしろこんな場所だから人がいるんだよね」と思っていた。

ボクはこの場所に来たのは初めてだ。ただ周囲の景色に既視感があった。初めて来た場所なのに過去にも来たことがあるように感じた。

野外のトイレ。

薄暗い密林。

木に囲まれたとフェンス。

目につく至る所に既視感があった。

ここは福岡市にある公園だった。でもゲイの人たちにとっては普通の公園じゃなかった。

ここは夜になると野外のハッテン場へと変わる公園だった。

<つづく>