二度と戻りたくない場所<2>

ボクらが歩いているのは比較的に新しくできた公園のようだった。

「こういった野外のハッテン場って、どういった経緯でできるんですかね?」

彼は疑問に思っていることを口に出した。ボクも大学時代に似たようなことを疑問に抱いたことがあったのを思い出した。

「誰かがこの公園は野外のハッテン場に向いているって気がついて、徐々に広まっていったんだろうけど……」

ボクらは二人であれこれと野外のハッテン場の設立の経緯を議論をしていた。

「インターネットが始まってからは誰かがネット上の掲示板に公園名を書き込んで、徐々に公園名を見かける頻度が高くなって認知度が上がって人が集まってきたんじゃないかな?」
「じゃあ。インターネットができるまでは口コミだったのかな?」
「どんな方法で口コミが広まっていったんだろう?」
「ゲイバーとかそういった場で情報が広がっていったんじゃないかな?」
「でもどうやって待ち合わせの連絡を取ってたのかな?」
「昔は誰かと待ち合わせするのに駅のホームに伝言板とか使ってたみたいだけど、行き当たりばったりだったのかな?」

ボクの大学時代にはスマートフォンがなかった。

例えば野外のハッテン場から出会い系の掲示板に書き込むのにも、その都度、基本料金とは別に通信料が取られた。それでも携帯電話を使えばインターネットにはつなぐことができたので、リアルタイムで連絡が取れるような状況は一応出来上がっていた。

ボクたちが生まれる前から野外のハッテン場のような場所はあったはずだ。

インターネットが始めってからは何となく想像ができるけど、インターネット以前の時代に、誰が野外のハッテン場を広めて、どうやって待ち合わせしたり、連絡を取り合っていたのか想像もつかなかった。

「それにしても、よくこういった公園を見つけて来るよね……」
「確かに格好の場所ですよね……」

さっきからすれ違う人は全くいなかった。

駐車場のすぐ近くに屋外トイレがあった。ボクらはトイレの前に立ってキョロキョロと辺りを見渡した。

駐車場には約6台ほど停まっていた。

なぜか車の中に人がいたのは2台だけだった。残りの車には誰もいなかった。公園の周囲を見渡しても誰もいなくて、残りの4人がどこにいるのか分からなかった。公園の周囲は真っ暗で、民家もなければ、店もなかったので、残り4人がどこにいるのか検討もつかなかった。トイレの中の気配を耳を澄ませて探ってみたけど物音は全くしなかった。

目を凝らして残り2台の車の中を見てみると、どちらの運転席にも40歳を超えた感じの男性が座っていた。一人は寝ているように見えたけど、もう一人は下を向いてスマートフォンをいじっているようで顔が青白く光っていた。

駐車場の位置とトイレの位置の関係から、車の中でスマホを使って連絡を取り合って、トイレに誘って関係を持つことが想像できた。

ボクはスマホをいじっている男性をじっと観察していた。その男性が顔を上げた瞬間に目が合ってしまったので慌てて目を逸した。でも目の端で彼の方をこっそり見ていて、じっとボクらの方を観察しているのが分かった。

「車の中の人と目が合っちゃいました。まだこっちを見てます。あっちに行きましょうか?」

これ以上いても邪魔になりそうだったので別の場所に移動することにした。

ボクらは「寒い!」と叫びながらトイレの前を横切ってグランドに出た。グランドを歩きながら周囲を目をやると、いたるところで「懐かしい場所」を目にした。

<つづく>