二度と戻りたくない場所<3>

「あそこのフェンス裏の何本か木が生えている辺りはスポットぽいです」

「あそこの木が鬱蒼と生えて薄暗くなってる辺りもスポットぽいです」

「あぁー懐かしい。京都時代に似たような場所を沢山見ました……」


ボクは指差しながら彼に説明をしていた。


懐かしい場所が沢山目についてしまって、自分の大学時代の体験を思い出しながら夢中になって説明していた。福岡と京都で全く違う場所にいるのに、その場所の雰囲気はそっくりだった。


あれから15年近くも経つのか……


このサイト上で野外のハッテン場に行った体験を書いてきたけど、こうやって実際に足を運んでみたのは久しぶりだった。


大学を卒業してからは野外のハッテン場に足を運んだことはなかった。


一度だけ福岡に引っ越してから天神に遊びに行った帰り道に、野外のハッテン場になっている公園を横切ってみたことがある。ただ早い時間でもあって誰もいなかった。目につくのは高校生ぐらいの男女のカップルだけだった。後で知ったんだけど、その公園は全く流行っていない場所だったらしく、事前に出会い系の掲示板で連絡を取り合ってから行かないと、普段は誰もいない場所だった。


「やっぱり詳しいですね。そうやって男と沢山の遊んでたんですね?」


彼は意地悪そうな目をしてそう言ったので、ボクは「誰かと野外で関係を持ったことは一度もないですよ」と自信を持って否定した。


結局、ボクは話し相手を求めて野外のハッテン場を巡ってみただけで、知らない誰かと野外で肉体関係を持つことに最後まで抵抗が拭えずに終わった。


彼は「あっちの方にもこういった場所があるみたいなんで行きませんか?」と言ったので、ボクも「行ってみましょう」と答えて一緒に歩きだした。


ちなみに彼が何故、この公園の内情について詳しいかというと、出会い系の掲示板に公園内のスポットが詳しく書かれているのを読んでいたからだ。


それと過去に一度だけ、この公園に来たことがあるらしく、暗くて怖い上に、見知らぬ誰かと関係を持つ気にもなれずに、誰にも会わずにすぐに帰ったらしい。彼のゲイとしての人生経験は浅く、ボク自身も似たような経験をしてきたので、彼の不安と期待が入り混じった気持ちがよく分かった。


ボクも家に帰ってから、その掲示板を見たけど、ちょっと驚いてしまった。


その掲示板の自体の存在は以前から知っていた。


ある有料ハッテン場で知り合ったゲイの方が教えてくれたからだ。


ちなみにこのゲイの方に関しては、過去に書いたことがあって日中の喫茶店で偶然に出くわした人だ。そのゲイの方は「これサイトがすごく便利だよ」と言って、掲示板サイトを表示したスマホを手渡してきたけど、ボクの方は野外のハッテン場には興味がなかったので「へぇー。すごいですね」と受け取った画面を見ながら適当に受け流していた。


彼と公園に行った日。家に帰ってから、あの掲示板サイトを改めてよく見てみると、ボクの大学時代に比べて野外のハッテン場が混沌とした状況であることが分かった。ゲイアプリの登場で野外のハッテン場は消滅すると思っていたけど、そうでもない状況だということに気が付いた。


<つづく>