二度と戻りたくない場所<6>

「あれっ?  あの白い車って……さっき森の方に停まっていた車じゃないですかね?」


ボクは駐車場に停まっている白い車を見て、どこか見覚えのある車体だと気が付いた。


その白い車は、ボクらが公園に来た最初から停まっていた。車のエンジンはかかったままで最初と同じ駐車位置だった。よく見ると車のナンバープレートが「福岡ナンバー」じゃなくて、先程、森の方で見た車のナンバーと同じだった。最初に見かけた時と同じように、運転席には40代くらいの男性が座っていて下を向いてからスマホをいじっていた。


「もしかして運転席の人って、さっきすれ違った人じゃないですかね?」


スマホの明かりに照らされた青白い顔は、ついさっきすれ違った人に似ていた。


「そういえば顔も年齢も似てますよね」

「あぁー。間違いなくあの人ですよ。でも、さっき森に車を停めていたのに、どうやって駐車場に戻って来たんだろう?」

「途中で車とすれ違わなかったですよね。でも間違いなくナンバープレートは、さっき森で停まっていた車ですよ」


ボクらは話しながら、運転席に座っている人の動向を時系列で整理した。


最初に公園に来て、ボクと運転席の人の目が合った後、ボクらは歩いて公園から出て行った。それから運転席の人は車を移動させて、ボクらの歩いた公園内を横切る道とは別の道。つまり公園から出て国道の外周を回って先に森に到着した。そして車から降りて森を歩いていた。ボクらが手を繋いでゆっくり歩いて森に到着した頃には、運転席の人は既に森を一周して歩いて公園に戻っていた。それからボクらが森を一周して公園に戻ることにして、運転席の人も公園を一周して森に停めた車まで戻ろうとしていた。


そのタイミングでボクらはすれ違った。


すれ違った後、ボクらがもう一つのスポットに立ち寄っている間に、運転席の人は車まで戻って公園を外周してから最初の駐車場に戻って来た。その後に、ボクらも駐車場に戻って来た。


ざっとそんな流れだと推測した。


ちなみにこの日、ボクらはお互いの家に帰ってから、この公園の掲示板を見ながら電話で話をしていた。ちょうどボクらが公園にいた同じ時間帯に、40代男性の書き込みがあるのを見つけた。ボクが福岡空港を撮影した時間と、その掲示板の書き込みの時間は数分しかずれておらず、書き込みのプロフを見ても車にいた男性が書いてものとみて間違いなさそうだった。


たった一人だけだったけど、あの公園には間違いなくゲイの人がいた。


ボクらはやっぱりあの公園は野外のハッテン場なのだと確信した。


<つづく>