ボクらは車に乗って元来た国道に戻った。
きっと彼は「あの公園に一緒に行ってみたい」と興味本位で言っただけだと思う。特に何か深い考えがあって誘ってくれた訳じゃないと思う。でもボクはあの公園に連れて行ってくれたことに感謝していた。
「もう二度と戻りたくないです……」
「ああいった野外のハッテン場にはもう二度と戻りたくないです」
ボクは車の中で繰り返して似たようなこと言っていた。自分でも同じことを何度も言ってるという認識はあったけど、あの公園に行ってみて一番深く感じたことだったので止められなかった。
もし彼と別れることがあっても、ボクはもうあの場所に戻るつもりはなかった。
「ボクはもうハッテン場には行きませんけど……」
「もし……ショウタさんがそう言った場所に行きたいのなら行ってもいいですよ」
10月くらいだったか彼と付き合い始めてから、そんなことを言ったことがある。
彼に言った後、冷静になってから後悔した。
彼は若い。それにボクは性欲が強い方ではない。彼に余計な重荷を背負わせたくなかった。
そんな色々な理由があるにせよ、ああいった公園には、ほとんど先がないことを知っているのはボク自身だった。だから彼に「行ってほしくない」と言うべきだったと後になって後悔した。
年末の30日。ボクの部屋で彼と映画を見て、晩ご飯を食べてから、パソコンの画面を一緒に眺めていた。
そのパソコンの画面には、彼と出会ってから訪れた場所の写真が映っていた。
「たった数ヶ月間で、いろんな場所に行ってますよね」
彼と8月に出会ってから、自分でも思ってもないくらいに、かなりのハイペースでいろいろな場所に行っていることに驚いた。ボクはまめに写真を撮る方ではないから、実際には、もっと沢山の場所に行ったはずだった。
ゲイのカップルはなかなかうまくいかないという話をよく聞く。
ただ、もし彼と喧嘩して別れることがあったとしても、これだけ一緒に時間を過ごしていれば、ボクらの間に何もなかったことにはならないだろうなと思った。これから先も、もっと思い出を作っていきたいと思った。
ボクらは公園を後にして、彼の車で西鉄のある駅の近くまで送ってもらった。
車から降りて時刻表アプリを見たら、2分後に電車が到着する予定だった。ボクは急いで改札を潜って駅のホームに降りた。既に電車はホームに到着していて滑り込みでギリギリ間に合った。
いくつか駅を通過した時、彼から「こちらは無事に家に帰りました」というメッセージが来た。ボクは今どの駅を電車が通過したのか確認して、あとどれくらいの時間で家に戻ることができるのか返信した。
そして彼にメッセージを返信してから、ずっと公園の出来事を思い出していた。
<つづく>