足りないものを補い合っていくこと

ボクは人に比べて一般的な知識が少ない。


彼と付き合い始めてからというもの、つくづく実感している。


世間の人が当然に知っているような一般知識が欠落している部分が多く、ずっと一人で生きて自分の興味がある分野にだけ関心を持ってきたからだと思う。


ボクは自分の興味がある範囲を狭く深く掘り下げていくタイプだ。そして何かを考える時は瞬発的に反応して結論を出す。それに対して、彼は自分の興味がある範囲に関して深く掘り下げつつも、興味がない範囲についても広く浅く知っているタイプだ。ボクに比べれば人としてバランスが取れているように思う。そして何かを考える時はじっくりと時間をかける方だ。


お互いに反対の部分が多いけど、それでも興味がある特定の分野については深く知っているという共通点もある。


ボクはテレビをほとんど見ない。興味がある特定の番組をいくつか見るだけで他の番組は全く見ない。芸能人について全く知らない。ボクはもともと福岡出身ではない。自分が今住んでいる福岡県のことも詳しく知らない。ボクが興味を持っていることは世間一般の人が興味がないようなことが多く会話のネタも少ない。


食後、皿を洗いながら彼の方を見ると、歯磨きをしている手と止めて、じっとテレビを見つめている姿をよく目にする。福岡のローカルニュースだったり、彼の興味がある内容やキーワードがテレビから流れてくると、歯磨きをする手を止めて、じっと集中して見ている。


ボクはそんな彼の姿を見ながら「こうやって情報を仕入れてるんだな」と思っている。彼は福岡出身だけあって地元のことも詳しく知っているし、日本だけでなく海外のことも詳しく知っている。


ボクは自分に興味がないと思ったことは極端なくらいバッサリと切り捨ててしまう。


知っているということは、何かを考えたり選んだりする際の選択肢を増やすことにもなる。だから幅広く知っている人を見ると羨ましくなる。その半面で、知っていることを無駄に増やしても意味がないとも思っている。彼を見ていると興味がある分野と、興味がない分野だけど知っておいた方がいいことに対するバランスが取れていて羨ましく感じる。


少し前まで、そういった性格を「どうにかして克服しよう」と思っていたのだけれど、最近は「もういいや」と諦めるようになった。


物心がついた頃からこんな性格や考え方をしていて、もう30代の後半になってしまった。今更になって考え方や生き方を変えることなんてできない。今は無理して変わろうとするよりも自分の得意な面で関わっていけばいいと思っている。それに彼と付き合い始めてから、自分に足りない部分は、彼に補ってもらえればいいと思うようになった。ただ「ボクは彼に与えてもらってるけど、ボクは彼に何かを与えてあげているんだろうか?」と思うときもある。


少し似ていて少し違う。


これくらいのバランスがちょうどいいよう思っていて、お互いの分担分けをしながら一緒にいたいと思う。