ゲイショップの思い出<1>

「初めてアダルトショップに行ったのっていつだったかな?」

先日、彼と電話で話していると、そんな話題が突然に始まった。

その日の夜は新年会があって、数カ月ぶりにアルコールを飲んだ。

彼に「あんな料理にお金を払うくらいなら、先日一緒に行ったイタリアレストランの方がいいです」などと、守銭奴丸出しの悪態をついていた。そこからどうなったのか分からないけどアダルトショップの話題が始まった。

ちなみにボクはほとんどアルコールを飲まない。彼と電話している時も、とっくの昔に酔いは冷めてて正気だった。決して某ゲイブロガーのように酔っ払った勢いで文章を書くような醜態は見せない。そのノリが羨ましいけどね。

新年会→イタリアレストラン→アダルトショップという会話の飛躍のめざましさに驚きつつも、よくよく思い出すと、その会話の流れの中で彼が『ルミエール』という言葉を出したからだ。

ボクは彼の口から『ルミエール』という言葉を聞いて少考することになった。

『ルミエール』

この名前をゲイの人たちが聞くと大半の方々は、

「あぁー。あのゲイ向けのアダルトショップの『ルミエール』ね」

と自動変換されるかもしれない。

でも福岡に住んでいるゲイの人たちは事情が違う。決して早とちりしてはいけない。

男友達から

「この前『ルミエール』で下着を買ってさー」

なんて言われても、

「そうなんだ俺もこの前『ルミエール』でケツワレ買ってさー。ついでにオナホールも買っちゃってさー」

なんて、ノリよく反応してはいけない。

福岡に住んでいる男友達が言っている『ルミエール』とは、ゲイの人達が真っ先に思い浮かぶアダルトショップではないのだ。

福岡にある激安のスーパーマーケットの『ルミエール』を意味しているからだ。

福岡には『ルミエール』というスーパーマーケットの店舗が沢山ある。ボクはその店舗の看板を目にする度に複雑な思いがする。そして会話の中で『ルミエール』の名前を出すのを躊躇ってしまう。職場の同僚が「この前、ルミエールで○○さんを会ったよー」なんて会話を聞くと「そうか○○さんはゲイだったのかー」と脳内妄想が始まるのを必死に抑える必要があるのだ。

彼が電話口で言った『ルミエール』という言葉は、もちろんスーパーマーケットの方を意味している。彼も「アダルトショップの方じゃないよ」と丁寧に補足してくれた。

ボクは彼と電話で話しながら自分の記憶を辿っていった。

ボクが初めて行ったゲイ向けのアダルトショップ。それはやっぱり『ルミエール』だった。

<つづく>