ゲイショップの思い出<3>

京都に『ルミエール』ができたらしいよ。

ボクが大学を卒業して京都から離れる直前くらいに、ゲイ向けの出会い系の掲示板サイト上の書き込みを読んでいて、京都市内に『ルミエール』がオープンしたことを知った。

当時、ボクは『ルミエール』という言葉が何を意味しているのか知らなかった。

その言葉を検索してから関東地方にもある大手のゲイ向けのアダルトショップであることを知った。出会い系の掲示板上では、ゲイの人たちの喜びの声が沢山書かれていて、「そういえば『ルミエール』ができたらしいよ」「どこにあるの?」といった会話を見かけるようになった。

ずっと停滞していた京都市内に、やっと新しい店が出来たと喜びの声が見られた。

今になって振り返ってみると、ゲイ活動をするにしても『京都』は少し中途半端な位置にあったように思う。

ボクはゲイ活動のために『大阪』まで足を運んだことは一度もなかったけど、当時話していたゲイの人たちの何人かは「大阪の『堂島』まで電車で遊びに行っている」と言っていた。

ちなみに、ボクが初めて『堂島』に足を踏み入れたのは3年前の12月だ。

ある歌手のコンサートが大阪で開催され、開演まで時間があったので『堂島』に立ち寄ってみた。

まだ日中ということもあって、福岡の歓楽街の中洲を昼間に散歩しているのと変わらない感じがして、特に店に入ることもなく、どんな街並みなのか散歩して時間をつぶしていた。ネットで検索してみると、京都市内比べて大阪の方がゲイ関連の店もはるかに多かった。

ぶらぶらと散歩しながら「大学時代に京都から大阪まで活動範囲を広げていたら、もっと状況が変わっていたのかな?」と思ったりもした。

少し話がそれてしまうけど、ボクがゲイデビューしてから1年ぐらいが経った頃からだろうか『2ちゃんねる』という巨大掲示板サイトを見るようになった。『2ちゃんねる』については説明するまでもないけど、そのサイト上に同性愛の専用スレッドが立っていることを知ったのだ。しかも同性愛関連のカテゴリーの中に、それぞれの地域ごとのスレッドが立っていることに気がついた。

それからボクは2ちゃんねる内の『京都市専用スレ』を定期的に眺めるようになった。

ボク自身はスレッドに書込むことは一度もなかった。とりあえず情報収集のために定期的に眺めているだけだった。どちらかというとスレッドに書かれている内容は悪口や噂話のような話題が多くて有益な情報は少なかった。「◯◯公園に女装子が出没する」とか、「画像掲示板に◯◯姉さんが飽きもせずに投稿している」とか、「売り専の◯◯の性格が最悪」など、同じゲイの世界なのに、ボクの知っている世界とは次元が違っていた。「この話題についていくにはどこまでゲイの世界に踏み込んだらいいのだろう?」と不思議に思っていた。

その『2ちゃんねる』のスレッド上でも京都市内に『ルミエール』がオープンしたことが話題になっていた。

どこに『ルミエール』はあるのだろう?

ボクも当然のごとく興味を惹かれてしまった。

わざわざ出会い系の掲示板上にも店の住所を書いてくれた人がいて、その住所を手がかりに調べると、京都市内に唯一存在していた『サポーター』という有料ハッテン場のすぐ近くだということに気がついた。『サポーター』から歩いても3分もかからないくらいの場所に『ルミエール』はオープンしていた。

ボクも「一度くらいは行ってみたい」という気持ちになって、次に『サポーター』に行く機会があったら、ついでに寄ってみようと思った。

<つづく>