ゲイショップの思い出<4>

ボクは京都の『ルミエール』に行ったけど、それほど思い出がない。

いつものように不審者のように店の前を何度もうろうろして、とうとう足が痛くなってから「そろそろ勇気を出して入ってみよう」と決意して店に踏み入れた。

結局、店の滞在時間は10分くらいだった。それに行ったのも1回きりだった。

はっきり言って、大学時代のボクにとってはアダルトグッズは興味があるものではなかった。当時のボクが知っているアダルトグッズといえば、コンドーム。ローション。ラッシュ(当時使っている人が多かった)くらいなものだった。

実を言うと、当時はオナホールの存在すら知らなかった。

この『ルミエール』に訪れた際、初めてTENGAのオナホールを見たけど、何に使うのか分からなかったくらいだ。

まさかこの太い棒のような物を、そのままお尻に挿れるの?

こんな太い物を挿れたら気絶するんじゃないの?

お尻が裂けて血が出ちゃうよ!

いやいや。そんな訳がない。もっと別の使い道があるに違いない!

オナホールを手にとってまじまじと見ながら、そんなことを真剣に考えていたのだから、今となっては笑えてしまう。

まさかビニールを開けて、この筒状の物の中にペニスを挿れることができるなんて想像もしていなかった。ボクがオナホールなる物の存在を正確に認識したのは、社会人になってゲイ動画で目にしてからだった。

それから大学を卒業して、ボクはゲイの世界から遠ざかってしまう。

結局、就職して東京に行ってからもゲイ活動は行って行っておらず、転職して福岡に引っ越してからも、アダルトグッズには興味が湧くことはなかった。福岡の住吉にはルミエールと同じようなゲイショップがあったけど、行ってみたいという願望が湧くことはなかった。

再びゲイショップに訪れたのは、去年5月に東京に行って初めて新宿2丁目に訪れた時になる。

新宿2丁目で『ルミエール』などの店に入ってみたものの、大して興味は持てなかった。「別に欲しい物はないよね」と思って特に何かを買うことなく終わってしまった。「そんなに欲しければインターネットで買えばいい」と思っていた。むしろどんな客が来ているのかと、そういったことばかり観察していて、特に店自体には興味が持てなかった。

そんなボクが初めてアダルトグッズを買ったのは東京レインボープライドの会場だった。

福岡のゲイの人にプレゼントするためにTENGAのオナホールを買ったのが、生まれて初めて買ったオナホールだった。

そんな感じで、真面目なボクにとってアダルトグッズに全く興味がない物だったんだけど、彼と付き合い始めたことがきっかけで状況が変わってくることになる。

<つづく>