ゲイショップの思い出<7>

去年の年末に観た、ゲイカップルの南和行さんと吉田昌史さんで出演しているドキュメンタリー映画『愛と法』の中で、南和行さんがアダルトグッズを買うシーンがある。


いきなりのシーンで


「ちょっと南くん。何を買ってるのよ!」


と、大阪のおばちゃんぽい感じで突っ込みを入れながら鑑賞していたのだけれど、何のことは無く「弁護士」という職種だけあって、あくまで仕事で利用するために買っていた。


それも「ろくでなし子さん」の裁判で使用するために買ったのだ。ろくでなし子さんの性器をかたどったアート作品と、アダルトグッズ専門店で販売している性器を模倣した商品との扱いの違いを裁判でとりあげることを目的に購入していた。


上映中に、ろくでなし子さんの作った自分の性器をかたどったアート作品がスクリーンに映し出される度に、ボクの右隣に座っているショウタさんと左隣に座っている男性の両隣が劇場内で一番大きな声を出して笑っていて少し恥ずかしい思いをした。


その映画館からの帰り道、裁判が終わった後に南和行さんら弁護団のメンバーが「あのアダルトグッズをどう処理したのか?」「誰が持って帰って使用したのか?」など一緒に妄想をしながら渡辺通りを歩いていた。こういった馬鹿馬鹿しい話を彼とするのも楽しかったりする。


話を戻す。


ボクが「オナホール」に関心を持ったのは、南和行さんのように「仕事」のためなんて、かっこいいものではなかった。裁判で判決を勝ち取るためなんて、かっこいいものでもなかった。


ただの「性欲」と「好奇心」からだった。


当初、彼の方が「オナホール」などアダルトグッズに関しては興味津々だった。どちらかというとボクの方はヒキ気味だった。彼と会話をしていても、ボクは「そんな物の何がいいの?」という感じで興味が無かった。


そのはずだったけど、ある日を境に立場が逆転してしまう。


彼が興味津々だから、ちょっとオナホールについて調べてみようかな?


ボクはそれぐらいのノリでパソコンに向かっていた。それから気が付くと夢中になってオナホールについて調べている自分がいた。


なかなかオナホールの世界も奥が深い。


そんな感じで、ボクはオナホールにのめり込んでしまった。


仕事中に暇な時間ができると、周囲の目を盗みながら、こっそりとスマホでオナホールについて調べていた。そして夜になると彼に電話で「どんなオナホールがいいのか」について少し熱くなって説明していた。


そのうち


「最初は乗り気じゃなかったのに、どうして急にオナホールに関心を持ったの?」


「興味を持ってくれるのは嬉しいけど、いきなりどうしたの?」


と、彼が不安そうに尋ねてきた。


ボクの豹変ぶりに、今度は彼の方がヒキ気味になっていた。


<つづく>