ゲイとして生きる君へ

中学時代に同性愛に目覚めカミングアウトしてました。過去や現在のことを綴っています@福岡

絶対に会えてよかった<97>

あの階段ですれ違った日から、ボクは数週間後に同じ店に行った。それから店内で彼の姿を探していた。

年上の猫背。

彼と初めて会って以降、ボクはそれらを手がかりにして彼の姿を探すようになっていた。

彼は全く物音を立てずにいきなり姿を現す。でも暗い闇の中でも猫背気味のシルエットはぼんやりと分かるので彼だと認識ができた。

長い時間待って、彼の姿を見つけた。ボクは「あの……この前階段ですれ違って話した者ですけど」と声をかけると、彼はいきなり声をかけられたことに驚きつつも「あぁ……あの時の!」と言った。それから彼はボクの身体を触っていいのか躊躇していたので、「こんなこと話すのも恥ずかしいですけど……ずっとあなたを待っていたんですよ」と言うと、「ちょ……こっちに来い!」と嬉しそうに言ってボクの腕を掴んでいた。「そんな嬉しいことを言われたのは初めてだよ」と言っていた。

彼はいつもフリーだった。

年齢的にも彼を相手にする人はなかなかいなかったようだ。

そして彼は既婚者の子持ちだった。

ただボクは気にしなかった。それまでも年上の人と何人も出会っていたし、既婚者のゲイの人とは何人も出会っていた。

ボクらはすぐに打ち解けてしまった。

ボクは彼の妻や子供に対する悩み。職場の悩みを聞いて相談に乗るようになった。どこでお互いが働いているのかも知っていて、仕事の話もするようになっていた。そのうちボクは彼に人間的な親しみを覚えるようになっていた。彼と肉体関係を持つ時間よりも、お互いの意見を言ったり、会話する時間だけでも楽しかった。

この時期に、ボクは先に書いた10歳年下のゲイとも話をしていた。

ボクの頭の中で、10歳年下のゲイと10歳年上のゲイを比較してしながら会話していた。

10歳年下の人が肉体的には魅力的なのかもしれないと思った。

でも10歳年上の彼の方が精神的には魅力的だと思った。

ボクがどちらを重視しているかと言えば後者だった。

そんなことを10歳年下の子の可愛い寝顔を見ながら考えていた。

彼はボクに甘えるように抱きついてぐっすりと眠っていた。ボクは「そろそろ帰りますね」と言って彼の身体を揺らして起こした。彼から「はーい」と寝ぼけた返答が返ってきたので、ボクは巻きついた腕をほどいてから立ち上がった。

じゃあね。バイバイ。

ボクは彼の寝顔の向かって、そんな言葉を心の中でつぶやいてから店を後にした。もう彼の相手をするのは止めようと思っていた。

どちらにせよ20代前半の子とは、それから会うことはなかった。

ボクはそれからしばらくして有料ハッテン場には行かなくなってしまった。

<つづく>