絶対に会えてよかった<98>

ボクが人間関係を築く際に、個人的に重視していることが2つある。


それは「琴線に触れるような言葉を言ってくれるか」どうかだ。


これは話し言葉でも、書き言葉でもどちらでもいい。言葉でなくても生き方や身振りやなどの姿勢や態度でもいい。どんなに見た目が好みのタイプでも、やり取りをしていて何か心にひっかかるようなことを感じない限りは「この人とは無理だろうな」と思ってしまう。それ以前に人としても強く興味が持てない。ボクが10歳年下の子に興味が持てなかった理由は、彼と接していても琴線に触れることがなかったからだ。


それともう一つボクが人間関係を築く際に重視していることがある。


それは「相手と対等な立場でいれるか」どうかだ。


ボクは誰かに甘えてみたいとか、誰かから甘えて欲しいとか、そういった願望が全くと言っていいほどない。それで相手が年上なら、立場上もあって年下に甘えてみたいという願望を示す人は少ないから、年下のボクの方がしっかりしていれば対等な関係でいられると考えていた。自分の力で相手との関係をコントロールできると考えていた。


その二つの理由から、年下よりも年上の人の方に惹かれることが多かった。


全ての人がそうだとは言えないけど、ボクより人生経験が長い分、年下や同年代の人よりも年上の人の方が魅力的な人が多かった。職場でも年下や同年代よりは年上の人と話すことを好んでいた。ついでにボク自身、周囲の人と話していて「考え方が年寄りぽい」と言われることが多かった。趣味なども古くて「生まれる時代を間違えている」と言われることも多くあった。そんなことが度重なって、ボクは「年下と付き合うことは絶対にないだろう」と頭の中で決め込んでいた。


そんなボクが最近になって付き合い始めた人が年下だったことには自分でも驚いている。


彼はボクと匹敵するくらいに年寄じみた思考や趣味をしている。彼と話していても同い年か1歳くらい年下の人と一緒にいるような感覚しか持てなかったりする。会話の内容によっては、彼の方がよっぽど年上に思える時もある。彼も周囲から「年寄りぽい」と言われることがあるようだ。彼は少しだけ甘えん坊な所があるけど、それを補って十分なくらいに、ボクの琴線に触れることをしてくれる。細かい考え方は違っているけど、どこか深い場所で共通点があると感じている。


過去に話を元に戻す。


ボクは10歳以上も年上の彼と話すのが楽しくなっていた。


そんなある日、やけに彼の発言や行動が不審な日があった。ボクは不審に思って「なんか今日おかしいですよね?」と直接質問してみた。


<つづく>