おのぼり二人紀行<6>

僕らは次の目的地を御徒町に定めて、都営大江戸線の蔵前駅から地下鉄の入り口にたどり着いた。

 

僕が「それじゃあ地下鉄に乗りましょう」と促すと彼は複雑そうな表情をして立ち止まった。僕が「どうしたのだろう?」と思っていると、彼は「都営大江戸線は苦手だ」と言い出した。

 

いきなり何を言いだしたのかと思って理由を聞くと、「都営大江戸線は地下深くて階段が多い」「どうせなら景色を楽しみながら移動したいからバスを使いたい」と言い出した。僕は二つ目の理由を聞いて納得した。ちなみにこの後、都営大江戸線を何度か利用する機会があって、彼の言った一つ目の理由に関しても納得することになる。

 

そんな訳で僕らは停留所からバスに乗って御徒町駅を目指した。

 

考えてみると東京でバスに乗った記憶はない。もしかしたら初めての経験かもしれない。蔵前から御徒町へ走りながら街を眺めて楽しんだ。

 

御徒町に着ついてから駅の近くの『延吉香』で中華料理を食べることになった。

 

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お昼休みのサラリーマンが多かったけど客の大半が中国人のようだった。店員もほぼ全員が中国人のようだった。ご飯は食べ放題だったけど、これから先も外食が続くので我慢することにした。葱爆羊肉の皿に残った汁をご飯に付けて食べたかったけど諦めることにした。貧乏くさいけどクミンをちまちまと箸でつまんで腹の足しにすることにした。

 

ちょっと話が脱線するけど補足説明がある。

 

ここから先、ずっと外食が続くけど僕らは絶対に別々の料理を注文している。

 

何故別々の料理を注文しているのかと言うと、テーブルの真ん中に皿を置いて、二人で分けながら食べているからだ。定食を注文しようが何だろうが半分に分けて食べている。この食べ方を教えてくれたのは彼だった。僕も当初は自分が注文したものは自分で全部食べるのだと思っていた。ただ彼から「いろんな料理を少しづつ食べたい」という話を聞いて、別々の料理を注文してから分けて食べるようになった。滅多に食べに行かないけど、例えば揚げ物料理の定食を頼んだ時も、別々の揚げ物を頼んで半分に分けて食べている。わざわざ箸で半分に切ってから分けていることもあるし、少し冷静に考えてみると男同士の友達関係なら絶対にしないだろう。

 

先日放送されたドラマ『きのう何食べた?』の中で、レストランでゲイのカップル同士が食事するシーンがあった。そのシーンで主人公の一人のシロさんが周囲からゲイに見られたことを気にしてイライラして相方のケンジに対して怒りをぶつけるシーンがある。そのシーンを見ながら僕らのやっている食べ方って周囲にゲイだとカミングアウトしながら食べてるよなと改めて思った。

 

僕らは食事を終えて店を出てから高架線沿いを歩いて上野のアメ横に向かった。

 

彼はアメ横の乾物屋で巨大サイズのデーツ(ナツメヤシ)を買った。僕はデーツが好物だったりする。砂糖を使わなくても甘くて美味しく、職場にお菓子としてデーツを持って行って毎日一個は食べている。このデーツを教えてくれたのも彼だった。彼がアメ横で買ったデーツは僕の家の棚に眠っている。いつか全部食べてやろうかと目論んでいる。

 

僕らは次の目的地の上野の『アメ横地下食品街』に向かった。

 

<つづく>