第25章 職場でゲイとして生きる

職場でゲイとして生きること<20>

明日からは高校時代と同じように、完全にホモ扱いされて生きていくのかなと暗澹たる気持ちでいた。 「それで神原って男が好きなの?」「えぇ……もうバリバリに男が好きですよ」「おぉ! 神原のこと応援するよ」「ありがとうございます」 もはや失うものは何も…

職場でゲイとして生きること<19>

その場の雰囲気が気まずくなってきた。ボクはいつものように明るく受け流すことができなかった。その場の雰囲気がよそよそしくなったのを感じて、ボクはせっかくゲイであることを頑張って隠してきたけど、もうバレたと思っていた。 「なんでゲイバーに行かな…

職場でゲイとして生きること<18>

もしボクがゲイだと認めてしまったらどうなるのだろう。目の前で笑っている同僚たちも凍りつくだろう。急に態度がヨソヨソしくなったりするのかもしれない。それに考えすぎかもしれないけど、ゲイの上司なんて部下からすれば嫌な気持ちになるかもしれない。…

職場でゲイとして生きること<17>

「ねぇねぇ……彼女とは最近会ってるの?」 ボクの一番めんどくさかった対応だ。ホモかと問い詰めてくれた方が、何も考えないで否定すればいいから楽だった。ボクは頭をフル稼働させて前後の辻褄が合うように話を合わせていた。 「えぇ……会ってますよ」 そもそ…

職場でゲイとして生きること<16>

ふと考えてみると、同僚からの呼び名が「両刀使い」からいつの間にか「ホモ」に逆戻りしていた。でもそれは置いといて、その会社の担当者も人をホモ呼ばわりするなよ! ちゃんと人の名前を覚えろよ! ボクの会社の上司にホモの話とかするなよと内心で頭を抱…

職場でゲイとして生きること<15>

システムエンジニアになろうと思ったきっかけは不純だったけど、仕事をしていて人間関係を築くのが面白くてしょうがなかった。 「神原ってホモだからね」「違いますよ! 女しか興味がないですよ」 ボクは毎日のように、会社で不毛な戦いを続けていた。でも職…

職場でゲイとして生きること<14>

翌日、どこで同僚から見られているか分からなかったので、なるべく手を振らないで出勤した。 「いや〜昨日は衝撃的だったな。まさか神原が両刀使いだったとは思わなかった」 業務開始の前に、疑惑の原因を作った上司が席に着いて言った。ボクを弄るのが楽し…

職場でゲイとして生きること<13>

飲み会の帰り道、ボクは同僚と別れて一人になってから通りの店の窓ガラスに映る自分の歩く姿を見ながら歩いていた。 そんなにボクの歩く姿ってホモぽいかな? 少し手の振り方が大きいのかな? それとも少し手を横に振ってる感じがするのかな? あれこれ考え…

職場でゲイとして生きること<12>

こういった時、弄られキャラというのは大変だ。弄られキャラは、どこの会社や部署に最低でも一人はいると思う。まさにボクがその一人だった。同じ同期でも村上君は性格が神経質でキツイから誰も弄ろうとはしない。恐らく弄って遊ぼうものなら、上司であろう…

職場でゲイとして生きること<11>

「神原って歩く時の手の振り方とかなんとなくホモぽいって」 酔っ払っているためか前回と違ってしつこかった。ボクは自分の歩いている姿を頭の中に思い浮かべたけど、いまいち分からかった。 「えぇ……本当ですか?」 ボクは笑いながらごまかしまぎれにジョッ…

職場でゲイとして生きること<10>

その日は、それきりボクの話題には触れることなく終わった。そして数ヶ月の時間が流れて、特に同じ話題にならなかったので、ボクの中で上司の言葉も徐々に薄れていった。 そんなある日、あるプロジェクトが終わって打ち上げの飲み会をするため、会社近くの飲…

職場でゲイとして生きること<9>

その上司はプロジェクトマネージャーで、よくチームのメンバーに冗談を言っては笑わせて和やかなムードを作ることに長けていた。彼の言葉を聞いて同僚達は冗談かと思って笑っていた。周囲の同僚の様子を探ったけど、いつものように冗談と取っているのか別に…

職場でゲイとして生きること<8>

「キャバクラなんて、そんなの最初から断って行かなければいいのに!」 翌日、ボクは会社に出勤してから同期の村上君に前日の出来事を話していた。同期の村上君は真面目で几帳面で潔癖症だから、そもそも誘われてもキャバクラに行かないのだ。いや……そもそも…

職場でゲイとして生きること<7>

大学時代から有料ハッテン場に行きはじめたけど、その罪悪感は、自分の中で常に抱いているものだった。でも、なるべく見つめないようにしていた物だった。いや……見つめてはいけないものだった。 自分のやってることへの罪悪感。同性愛という社会的に認められ…

職場でゲイとして生きること<6>

ボクは何度も近づこうとしてくる彼女に対して、慌てて両手を上げて彼女にストップするようにジェスチャーで示していた。彼女は「この人って変ね」という感じで、ボクの顔を不思議そうに見ていた。彼女にも生活がかかっているのだろう、何度もボクの体を触ろ…

職場でゲイとして生きること<5>

キャバラクラの記憶。 そこには一度だけ上司との付き合いで一緒に行くことになったが、ほとんど記憶がない。正確に言うと記憶がないと言うよりは、何もしていないのだ。ただその場にいて、時間だけが過ぎていったのだ。 一緒にいったメンバーの誰々が、どこ…

職場でゲイとして生きること<4>

少し本筋からズレてしまうけど話を続けたい(この章は本筋からズレるのが、これで二回目だけど)。 これはボクがゲイであることと何の関係もない話だけど、ボクは割と人の話を真剣に聞いてしまうタイプの人間のようだ。有料ハッテン場で会った人と雑談して、…

職場でゲイとして生きること<3>

入社してから三日間の研修合宿があり、さらに会社内の一室に新人達が篭って一ヶ月くらいの研修があった。社会人のマナー講習やプログラムングやデータベースの講習を受けていた。そして研修日の最後に配属先が発表された。パッケージソフトを開発する部署に…

職場でゲイとして生きること<2>

かなりシステム業界に偏っているけど、しばらく仕事の話をしていきたい。 ボクが入社したシステム会社は、ある業界の自社パッケージソフトの開発&販売をしていて、業界内では、そこそこ売れている有名なソフトだった。 今になって振り返ると恥ずかしい話な…

職場でゲイとして生きること<1>

大学を無事に卒業して、東京の企業に就職した。 ボクの就職活動の時代は就職氷河期と言われて、求人もほとんどなく、志望していた業界の会社は軒並み落とされていた。いくつかの企業で最終面接近くまで残ったりもしたが、結局は全て落とされていた。ボクは当…