第6章 カミングアウトの代償

カミングアウトの代償<20>

この章の冒頭にも書いたけど、ボクにはカミングウトをすることがいいことなのか分からない。でもこれだけは言える。カミングアウトは、ボクのように軽い気持ちでしてはいけない。人生が大きく変わる覚悟を持ってからしなくてはならない。 カミングアウトをす…

カミングアウトの代償<19>

この街にはもういられない。 ボクがこの街にいたら、いつかきっと親に迷惑をかけてしまう。姿を消していれば、いつかきっとボクの存在も、みんな忘れてしまうだろうと思った。 ボクは大学生になってから、最低限の回数しか実家に帰っていない。ボクがほとん…

カミングアウトの代償<18>

後になって後悔しても遅いのだが、彼らの様子がおかしいとおもった時点で、近くことを止めておけばよかった。ボクは不審に思いながらも彼らに近づこうと歩きだした時だった。 「ホモ! キモい!」 「死ね! こっち来るな!」 二人は一緒になって、ボクにこれ…

カミングアウトの代償<17>

ボクは学校に戻ってから、ホモキャラを演じることを止めた。 今まで表面上は仲良く付き合っていた人達とも距離を取るようにした。ボクの演じていたキャラクターもちょうど飽きられ始めた時期だったのだろう、それから多くの同級生達がボクの前から去って行っ…

カミングアウトの代償<16>

言葉の力というものは強い。 この記事の言葉の力によって、今後のボクの人生は大きく転換していく。それは現在に到るまで影響を続けている。何かに悩んでいて本を読んでいると、ひょんなところにボクの悩みを解決する糸口となる言葉が落ちていたりする。ボク…

カミングアウトの代償<15>

ホモキャラを演じることに自己嫌悪を感じていて学校を休んでいた。そんなある日、ボクは本を読んでいて、ある文章に目が止まった。 少し恥ずかしい話だけど、ボクは同性愛に目覚める前、小学生の頃から中島みゆきの歌を聴いていた(その辺の経緯はいつか機会…

カミングアウトの代償<14>

ボクは母親が何をしたかったのかよくわからなかった。 ボクの家庭は仕事上の都合で、父親がほとんど家にいなくて、三歳年上の兄も東京の大学に行っていた。高校一年生から大半の日々を母親と二人きりで暮らして来た。父親は家庭生活に関与しておらず、家庭内…

カミングアウトの代償<13>

散歩に行く? 母親からの急な申し出にボクは意表を突かれた。 「えっ? 何で会社を休むの?」 「まぁ……いいじゃない。今から散歩に行こうよ」 そう笑って答えると、会社に電話をかけて仕事を休むを連絡した。そして直ぐに身支度を整えて、ボクを散歩に連れ出…

カミングアウトの代償<12>

学校を休んでいるときに何をしているのかというと、割と毎日を楽しく過ごしていた。 この話をするのは、かなり変わったボクの性格がバレてしまうので紹介するのも恥ずかしいけど勇気を出して書いてみる。 よく登校拒否をしている子供のイメージだと、部屋に…

カミングアウトの代償<11>

ボクはなるべく教室から出ないようにして、ずっと松田君と一緒に雑談をして過ごした。マイペースな彼と一緒に話している時だけが、学校で唯一心が落ち着ける時間だった。その日は何事もなく過ぎ去った。そして数日後、下校の時だった。松田君と一緒に自転車…

カミングアウトの代償<10>

手紙が川に流れて見えなくなるまで見送った。そして土手の道に戻って自転車を押して歩いた。 ボクにはついさっき手紙をくれた女の子の顔を思い浮かべることもできなかった。 女性の顔を覚えることができないのは、そもそも女性に興味が持つことができないの…

カミングアウトの代償<9>

手紙の出だしを少し読んだだけで不幸の手紙ではないことはわかった。この手紙はラブレターだった。 ラブレターをもらうのはこれが二度目だった。初めてラブレターをもらったのは、小学五年生の時だった。ちなみにラブレターを初めて送ってくれたのはもちろん…

カミングアウトの代償<8>

あの女子生徒に神原がホモだということを、どうやって伝えるのか? 同級生達はあれこれ案を出して検討を続けていた。ボクはそんな同級生達を黙って見ていた。いつのまにか自転車置き場に松田君の姿があった。そして同級生の一人から一連の経緯の説明を受けて…

カミングアウトの代償<7>

「ホモにラブレターを渡すとかありえないだろ!」 同級生達は口汚くののしっていた。ボクはその発言に対して怒りよりむしろ共感を抱いていた。そして受けった手紙をまじまじと見ながら嫌な予感がしていた。 もしかしたら不幸の手紙かもしれない。 この手紙を…

カミングアウトの代償<6>

ボクは女性には関心が無かったので気にならなかったが、他の同級生達は、彼女らの存在が気になってしょうがないようだ。女子生徒側は、明らかにこちらのメンバーの誰かに用事があるようだった。 「他の科の生徒だよね?」 同級生の一人が呟いた。他のメンバ…

カミングアウトの代償<5>

高校の担任も欠席が多いので、心配して声をかけてくれたが、欠席の原因は、自分がゲイであることに悩んでいるのが原因ではなかった。無理をしてホモのキャラクターを演じていることに対するストレスからだった。そもそも担任の先生はボクがゲイであることを…

カミングアウトの代償<4>

「神原と松田の関係が怪しい」 そんな噂がボクの耳にも入って来た。これはまずいな……松田君の耳に入る前に噂を消しておかないといけない。でも噂は瞬く間に広まってしまい、すぐに松田君の耳にも入ってしまった。 ボクは恐る恐る彼の反応を伺っていた。 ただ…

カミングアウトの代償<3>

ボクはホモのキャラクターを演じるの止めたかった。でも演じることを止めてしまえば、今までボクに興味を持って話しかけて来た人達ですら、面と向かって否定する発言をして来るのではないかと予感して止めることができなかった。 以前、インターネットの悩み…

カミングアウトの代償<2>

興味を持って話しかけて来る同級生がいる一方で、初めからボクに対して嫌悪感を露わにする同級生もいた。 「あれで……あいつホモらしいよ。マジで気持ち悪い」 「どうみても男じゃん。あれでホモ?」 「ホモとかマジで勘弁して欲しい。死ねばいいのに」 明ら…

カミングアウトの代償<1>

カミングアウトをすることがいいことなのかは分からない。でもボクはもう二度と公の場でカミングアウトをすることはないと思う。その思いに至ったのは高校時代の体験からだ。 高校に入学してからも、同じ中学の同級生から「あいつはホモらしい」という噂があ…